第五話 ヴァポラムの死闘

1. フローレンス城、玄関ホール
荷物をホールへ運び込んでいるデーニュとコーニュ。エレイン、ハルクロの姿を見留め、歩み寄る。
T:『第五話:ヴァポラムの死闘』
エレイン 「いよう」
ハルクロ 「なんで戻ってきたんだ、このバカ」
エレイン 「戻ってやったんだ。まずは感謝したらどうだ。それよりもハルクロ、いよいよ決戦か?」
ハルクロ 「ああ、『俺は』そのつもりだ」
エレイン 「俺は?」
ハルクロ 「ファデリーが動かん」
奥からアニエスが現れる。
アニエス 「デーニュ、コーニュ、ファデリー閣下がお呼びだ」
コーニュ 「(小声でデーニュに)何やった?」
デーニュ 「(小声でコーニュに)俺?」
デーニュとコーニュ、アニエスのほうへ歩き、3人去る。
エレイン 「あわただしいな」
ハルクロ 「お前がいなくなって、新しい歪が40箇所以上発生した」
エレイン 「40箇所以上?」
ハルクロ 「ああ、それが全部異界の魔女、つまり、お前が作りだしたことになってる」
エレイン 「異界の魔女? 私?」
ハルクロ 「いい通名(とおりな)だろう? ハイブリスの連中が吹聴してやがる。そこに騎士団も噛んでることになってる」
エレイン 「ハァ(ため息)……それでファデリーもピリピリしてる、と」
ハルクロ 「ああ、そうだ」
エレイン 「ハイブリスに好き勝手に噂を立てられて、何も出来ない、か」
ハルクロ 「大人の駆け引きってのがあるんだよ」
エレイン 「フン、知らねえよ」
エレイン、奥へ歩き出す。
ハルクロ 「何をする気だ!?」
エレイン 「私ならハイブリスを壊滅させられる。ファデリーにかけあってくる」
ハルクロ 「待て、10秒待て」
エレイン、足を止める。
ハルクロ 「異界の魔女がお前のことだって知っているのは、俺とファデリーとアニエスくらいだ。アシュリンとは、友達でいてやってくれ」

2. 同、執務室
ファデリー、デーニュ、コーニュ、アシュリンが話をしている。アニエスはファデリーの後ろに控えている。
デーニュ 「クルーゼンブルク城には、まだ使える井戸はひとつありますが、毒の沼はそのそばまで迫っています。姫を戻せるような場所ではありません」
アシュリン 「私なら別にどこでも……」
コーニュ 「それに、墓地からの瘴気で、多くの使用人が体を壊してます。それよりもダルディスク伯の城の方が……」
ファデリー 「伯父からは、しばらく我が騎士団とは交渉しないと使いが来た」
アシュリン 「そうでしたの……?」
SE:ノックの音
ファデリー 「アニエス、追い払え」
アニエス 「ハッ」
アニエス、ドアの方へ行くが、そのままハルクロとエレインに押し戻されてくる。
アニエス 「(ファデリーの方を見て)今追い払っているところです。少々お待ち下さい」
ファデリー 「(かぶせ気味に)もういい」

3. 界の果ての洞窟
世界の果ての洞窟。奥の祭壇の前で、護摩を焚いているカッパ。
マリウス(N) 「その頃、カッパは世界の果てで、ファデリーとその仲間たちがカッパに見える呪いをかけていました」
カッパ、振り返って目が光る。

4. フローレンス城 執務室
コーニュ(カッパ)「ヴァポラムに2000の兵が集められてる。やつら、ルナリアを侵略する気だ」
アニエス(カッパ)「ああ、歪みもおそらくあいつらの仕業だ。だけど証拠がない」
エレイン 「証拠なら、私が直接聞いた!」
コーニュ(カッパ)「それは証拠にならないよ」
ハルクロ(カッパ)「人質も結局は口を割ってはいないんだ」
エレイン 「歪みを作ってんのは事実なんだろう?」
デーニュ(カッパ)「歪だけじゃないよ。やつらはもう次の段階に入ってる」
エレイン 「裂け目を作ってるってこと?」
ハルクロ(カッパ) 「ヴァポラムには数十の空間の歪みがあるらしい。それを次々と広げてるって話だ」
ファデリー(カッパ)「話すだけ無駄だ。歪みはすべて異界の魔女が作った。少なくとも世間はそう思っている」
ハルクロ(カッパ)「うかつに動けばまたなんとか伯みたいに支援者が離れる、か?」
アニエス(カッパ)「大切なことです。支援者がいれば、姫が熱を出したまま引きずり回されることもなかった」
エレイン(M) 「畜生、どいつもこいつもカッパに見えやがる」
ファデリー(カッパ)「いずれにしても騎士団は動かん。ハイブリスは、ヴァポラムで俺たちと同じ失敗をおかす。それを待つ」
エレイン 「同じ失敗?」
ハルクロ(カッパ)「裂け目をいじくって、タッカーとフォルエイ、2つの国を滅ぼした」
ファデリー(カッパ)「ああ、その失敗をやつらにも味わってもらう。そうすれば、ハイブリスについている同盟の半数は外れる。仕掛けるのはそれからでいい。以上が作戦だ」
みな黙りこくる。
マリウス(N) 「こうしてみんな、カッパの呪いにかかる中、一人だけその呪いを受けない者がいました」
みんなカッパに見える中、アシュリンだけアシュリン本来の姿に見える。
アシュリン 「(涙を流しながら)人々が苦しむのを待つだけで、何もしないのが作戦でしょうか?」
エレイン 「アシュリン……」
アシュリン 「自分の気持ちを殺して、それで手にした正義で、本当に人を導けるんでしょうか?」
黙りこむカッパたち。
エレイン 「(立ち上がり)ああ、そのとおりだ! こっちの数が5万だったら打って出るんだろう? てことは負けてんだよ! 負けを認められずに屁理屈並べてるだけなんだよ!」

5. 同、執務室前廊下
カウチに座ってるアシュリンとエレイン。
アシュリン 「つまみ出されちゃいましたね」
エレイン 「ああ。それにしても……2000か……」
アシュリン、熱にうだされ、エレインにもたれかかる。
エレイン、アシュリンの様子に気がつく。
エレイン 「アシュリン! (アシュリンの肩を抱き留めて)誰かっ! アシュリン姫が!」

6. 同、アシュリン部屋前廊下
廊下で立ち話をするエレインとハルクロ。
ハルクロ 「このところ体調は悪くなる一方だったからな。医者も原因はわからんと言ってる」
扉ががちゃりと開く。カッパの医者が出てくる。
医者(カッパ) 「(エレインに)原因はわからん」
カッパ去っていく。
ハルクロ 「それから、騎士団の判断は変わらんそうだ」
エレイン 「糞どもが! お前はどうだ、ハルクロ」
ハルクロ 「騎士団の鎧を着る限り、俺もその一員だ」
エレイン 「(怒り)わかった」
エレイン、去ろうとする。
ハルクロ 「エレイン! お前は部外者だ、もう立ち入らなくていい」
エレイン、足を止める。
ハルクロ 「あとは俺たちの問題だ。娘のもとに帰ってやれ」
エレイン 「(振り向いて)私だって帰ってやりたいよ! でもここで帰ったら、私のほうが相棒失格だ! 助けてやれるのに……、私がお前たちを助けてやれるのに!」
エレイン、駆け出す。
ハルクロ 「エレイン!」

7. 同、玄関ホール
タッカー城から持ち帰った箱に腰を下ろしているハルクロ。
アニエスがやってくる。
アニエス 「ハルクロ殿、お耳に入れておきたいことが」
ハルクロ、顔を上げる。
アニエス 「ヴァポラムとの間にある検問所が襲撃されました」
ハルクロ 「エレインか?」
アニエスは何も言わない。
ハルクロ 「ファデリーは?」
アニエス 「騎士団は動いてはならぬ、と」
ハルクロ、怒りに震えながら立ち上がり、武器の箱を蹴破る。
ハルクロ 「騎士団でなければいいんだな! 騎士団でなければ!」
乱雑に中を物色して、武者風の兜を取り出す。

8. ヴァポラム密林 空間の歪み
広大なヴァポラム密林。
空間の歪みができた場所がある。
歪みの近くにハイブリスの大隊が駐留している。
クマのぬいぐるみ(グリアス)が空間の歪に向かって、シャドーボクシングするように威嚇している。
背後でアニエスが指揮棒で手のひらを打っている。
周囲でハイブリス兵たちが眺めている。
ハイブリスA 「あれは何をしているんだ?」
ハイブリスB 「あれで空間の歪みが広がるらしい」
ハイブリスC 「ハイブリス評議会奥院……恐ろしいバケモン揃いだとは聞いていたが」
ハイブリスB 「想像していたのと、ちょっと違うよなあ」
SE:遠くで爆発音
警戒するハイブリスたち。
ハイブリスA 「何事だ?」
ベルカミーナ 「(ふりむきもせず)あの女が来たのよ。この私に屈辱を与えるために! 行くぞ! 呪われし闇の落とし子よ!」
グリアス、ベルカミーナの方に振り返り、雄叫びを上げる。
グリアス 「ぐおおおおおおおっ!」
雄叫びは大地を震撼させて、恐れおののくハイブリス兵たち。
ハイブリスABC 「の、呪われし! 闇の落とし子ーっ!」
雄叫びを上げるグリアス。
グリアス 「ぐおおおおおおおっ!」
震え上がるハイブリス兵。
ハイブリスABC 「闇の落とし子ーっ!」
雄叫びを上げるグリアス。
グリアス 「ぐおおおおおおおっ!」

9. 同、空間の歪み ポイントA
空間の歪のひとつを警備する4人のハイブリス。
横たわった樹の幹をまたいで、つかつかと歩いて近づいてくるエレイン。
ハイブリスA 「何者だ?」
エレイン 「(振り向きもせず)あんたらを殺しに来たもんだ」
ハイブリスB 「殺しに来たぁ?」
上空から無数の火球が垂直に降り注ぐ。
それが終わるとハイブリスの4人、煙を出して倒れる。
エレインは懐からフレア・シェルを取り出し、歪を消す。
エレイン 「(消し終わって)おまえら、ちゃんと死んでるか?」
ハイブリスA 「(か弱く、手をあげて)生きてまーす」
上空から無数の火球が垂直に降り注ぐ。
ハイブリスA 「ぬわぁっ!」
光の剣3本がエレインめがけて飛んでくる。
エレイン、体を少しずらして2本を躱し、3本目を短剣で受けて落とす。
エレイン、樹々の間の一点を睨みつける。

10. ルナリア(異界)のエレインの家の外
テーブルで居眠りしていたサラ、突然起き上がり、まわりを見渡す。
サラ 「お母さん……?」
髪にとまっていた蝶が飛んでいく。

11. フローレンス城 アシュリンの部屋
眠っているアシュリン、そばについているアニエスと、二人のアバラボーンズ。
奥にはデーニュ、コーニュが座ってる。
アニエス 「落ち着いたみたいだね。ジョルジョ、おまえは姫についていてやれ」
アバラボーンズA 「わかりました!」
アニエス 「(髪をまとめながら)サルバドール、お前にはちょっとやっかいな頼みがある」
アバラボーンズB 「やっかいな頼み?」
アニエス、まとめた髪を短剣でばっさり切って、ざんばらのショートヘアになる。
  ✕   ✕   ✕
アニエスとアバラボーンズBが部屋を出て行くのを見送るデーニュとコーニュ。
コーニュ 「俺たち完全に空気扱いだよ」
デーニュ 「やっぱ、国帰ろうかなあ」

12. 同、ファデリー執務室
ファデリーは机で書類を見ている。
アシュリンの髪をヘルメットから垂らしたアバラボーンズがファデリーの背後に控える。
アバラボーンズはしらじらしく髪をいじっている。
ファデリー 「ところでアニエス。今日は何でヘルメットをかぶっているんだ?」
アバラボーンズ 「あの、それは、ものもらいが出来たので、見られたくないかなーと思いまして」
アバラボーンズの声はサルバドール。
ファデリー 「(書類を見ながら)へえ。それに今日は、ずいぶん声が低いな」
アバラボーンズ 「(無理に高い声を出して)アシュリン姫の風邪が移ったのかしらー。おほほほほほー」
ファデリー 「ああ、体には気をつけろよ」
アバラボーンズ 「お気遣いいただき、あーりがとうございまーす」
ファデリー 「ところで、アバラボーンズがジョルジョ一人残して、全員いなくなってるんだが、お前の指示か?」
アバラボーンズ 「ア、アバラボーンズが全員?」
ファデリー 「ああ、置いて行かれたヤツはあわれなもんだなあ」
アバラボーンズ 「ぜ、全員ってのは、あの、ええっと」
ファデリー 「そう、全員。俺も含む」
ファデリー、書類を置いて立ち上がる。
ファデリー 「こうなったら、行くしかあるまい?」
アバラボーンズ 「えっ?」
ファデリー 「アシュリンを頼んだぞ」

13. 街道
街道の先へと向かうアニエス。その後ろに、ぞろぞろついてくるアバラボーンズ。
アニエス 「なんでお前らまでついてくるんだーっ!」
アバラボーンズA 「隊長だけ危ない目にあわせるわけにはいきません!」
アバラボーンズB 「命令違反の責任もみんなでかぶりたい!」
アニエス 「お前らが来たら、騎士団が動いてんのがバレるだろう?」
アバラボーンズC 「そ、そうか……」
アバラボーンズD 「わかった! みんな脱げ! 鎧を脱げ!」
アバラボーンズE 「やべっ、俺今日パンツ履いてない」
アバラボーンズF 「こうなったらみんなパンツも脱げーっ!」
アニエス 「なんでそうなるー!」

(ABパート分けるとしたらここまで)

14. フローレンス城 アシュリンの部屋
アシュリンはベッドで横になっている。その横にはアバラボーンズ(ジョルジョ)が控えている。
奥の椅子にデーニュとコーニュが座っている。
デーニュ 「ハルクロ様がいつも言ってた騎士らしさって何なんだろうな」
コーニュ 「わかんね。片手剣って苦手なんだよ、俺」
デーニュ 「俺も。なんで騎士になんか志願したんだろうな」
コーニュ 「まだ騎士じゃないしさ」
デーニュ 「永遠になれそうにないよ」
コーニュ 「でも、だからって国へも帰れないしさ。俺いっそ、異界に行きてえよ!」
デーニュ 「いいねえ、異界ルナリア! ピンクのカバが住むところ!」
コーニュ 「それな!」
アシュリンの声が聞こえる。
アシュリン 「いないんです、ピンクのカバなんて」
コーニュ 「姫!」
デーニュ 「全部聞かれてました!?」
恐縮して立ち上がるデーニュとコーニュ、アシュリン、横になったまま続ける。
アシュリン 「ピンクのカバなんか、本当はどこにもいなくって、でも自分が本当に行くべきところに行きついた時に、それが見えるんですって……」
コーニュ 「アシュリン姫……」
アシュリン 「私ももちろん、そこに行きたい。でもそこに行く道は、私の心の中にしかない」
神妙な顔で聞くデーニュ、コーニュ。

15. ヴァポラムの空間の歪 ポイントB
鳥が一斉に飛び立つ。
SE:羽音
周囲を警戒する4人のハイブリス、更に3人が現れ、加わる。
ハイブリスA 「騒がしいな……何が起きているんだ?」
ハイブリスB 「異界の魔女だ、裂け目を消しにきたらしい」
ハイブリスC 「裂け目を消しに?」
ハイブリスA 「ああ、逆位相の魔法を使うらしい。こちらの防御はすべて貫通する。姿が見えたら即攻撃するしかない」
更に6人のハイブリスが合流する。
ハイブリスB 「おいおいおい、こんなに密集して大丈夫か?」
ハイブリスD 「ここで止めろと、奥院の司令官から指示が来た」
少し離れたところで、大木が1本倒れる。
振り返るハイブリスたち。
ハイブリスC 「なんだ?」
靄の中に人影が見える。
ハイブリスA 「あれは?」
ハルクロ、鬼神の鎧をつけてゆっくりと姿を表す。
ハルクロ 「異界の魔女が裂け目を消しに来る。事情は知ってるみてぇじゃねえか、虫けらども」
ハイブリスB 「誰だ!」
ハルクロ 「(歩きながら)操られるだけの木偶人形なら、見逃す気でいたが、知って歯向かうなら容赦はしねえ。それでも念のためだ。生き延びるチャンスを与えてやろう。生き延びてえやつぁ今すぐここから立ち去れい!」
ハルクロ、剣を抜いて一回転。
近くの大木がゆっくりと倒れる。
ハルクロ 「(見栄を切りながら)死にてえやつだけ、かかって来い!」
一瞬戸惑うハイブリスたち。
ハイブリスA 「やっちまえーっ!」
ハイブリスは一斉にハルクロに襲いかかる。
M:千鳥合方
火球を放つハイブリス。
ハルクロはその火球を刀で受け、間合いに入って斬る。
斬ったハイブリスを手前に引き倒し、その後ろにいるハイブリスを斬る。
飛んでくる火球を体をかがめ躱し、斬撃波を飛ばして1人斬り、別の敵の懐に飛び込んで腹を突き、背後の敵に蹴り、剣を腹から抜いて振り返りざまに蹴った敵を叩き切り、飛んできた火球を左手で受け、握りつぶし、怯えて逃げ出そうとするハイブリスが振り返るとそこに瞬時に回り込み、斬る。
ハイブリスB 「相手は剣士だ! 間合いを取れ! 密集するな!」
叫んでるハイブリスに石が飛んできて、倒れる。となりのハイブリスの元にハルクロ踏み込んで来る。応戦しようとする杖を切り落とし、切り返して斬る。そのハイブリスを足で蹴り、後ろのハイブリスに浴びせる。背後から来る火球の連弾を振り返り斬り落とす。
それを見て怯えている4人のハイブリス、何者にやられたかもわからぬうちに崩れ落ちる。
一人のハイブリスの視点から、ぐるっとまわりを見回すと、ハイブリスが次々と、見えざる敵に斬られ、倒れていく。
空洞の丸太の中を腰を低くして逃げるハイブリス、その前に閃光が走り、丸太ごと輪切りにされる。ハルクロ、これを蹴る。輪切りの中にはハイブリスが一人。転がる輪切りのあとを歩くハルクロ。それを遠目に見る総勢20のハイブリス。ハイブリス軍団は距離を取りハルクロを囲んで、杖を構えている。丸太の輪切りが倒れ、這い出そうとするハイブリスに剣を突き立てるハルクロ。
取り囲んだハイブリスによる魔法の一斉射撃。
ハルクロ、連続する爆発の中に消える。
  ✕   ✕   ✕
ハルクロが倒れたはずのところに20人のハイブリスが集まってくる。
ハイブリスF 「討ち取ったか?」
ハイブリスG 「ああ、生きてはおるまい」
その20人の背後、後ろの沼からゆっくりとせり上がるハルクロの姿。
泥水が滴る。
下段にかまえた剣が不気味に光る。

16. ルナリア(異界)の聖なる泉
サラ、目を閉じて何かと交信している。光のきらめきが降り注いでいる。
サラ(M) 「お母さん……どこにいるの……」

17. ヴァポラムの空間の歪、ポイントA
樹々の間を縫うように走るエレイン、それを追う光の剣7本、エレインの目の前に1本突き刺さる、2本目が来るがかわし、3本目を短剣でうけて躱し、続く剣の攻撃が来るのを見ながら、視界の端に見えたマリウスにノールックで3発の火球を浴びせる。
4本目、5本目叩き落とし、6、7本目体を捻ってかわす。火球をマリウスへ放つが、マリウスは軽くかわす。
地面から連続して剣が生えてきて、エレイン後ろ向きに飛び退きながらかわす。
ハイブリス 「いたぞーっ!」
エレイン、振り返り、ハイブリス兵の姿を見留める。3人の姿が確認でき、その3箇所から火球が飛んで来る。
エレイン 「チッ」
エレイン、火球を躱すと、次に上空からマリウスの剣が降り注ぐ。
エレイン、上を見ると剣に乗り宙を舞うマリウスの姿がある。
エレイン 「フン、上と下からはさみうちかい」
マリウス、上空から連続して剣を浴びせる。更にエレインには水平の3方向から火球が迫る。
エレイン、それらを避けるが、2本を避けきれず傷を負う、倒れこんだところにハイブリスからの火球が打ち込まれる。
マリウス、討ち取ったりの表情。
急降下してエレインにせまるマリウスの横を巨大な光の球が轟音を立てて通り過ぎて行き、マリウス、ギリギリでかわす。
マリス 「なんだっ?」
マリウスの後方にとどまる光の玉、マリウス振り返ると、光の球が人の姿に変わる、光の姿は、ゆっくりと体を回転させて振り返る。サラの幻影が姿を表す。

18. ルナリア(異界)の聖なる泉
目を閉じているサラ。
サラ 「あなたは誰?」
サラ、両手をふわっと広げる。

19. ヴァポラムの空間の歪、ポイントA
空中で剣に乗るマリウスと、浮遊するサラの幻影。
幻影はサラが取ったポーズと同じポーズを取る。
幻影のサラの周囲に8つの光の球が発生、光球は自由落下を始めたかと思うと、向きを変え、マリウスに向けて飛ぶ。
マリウス、これをひらひら避けて、光の剣を更に12本展開。
サラは両手のひらを上に向け、自分の周囲に6本のプリズム柱を発生させる。
マリウスの剣がサラに飛ぶが、サラの姿はプリズムを通して何体にも見え、すべて空を切る。
サラは手を広げて回転しながら上昇、螺旋を描いて光の球が発生、プリズムを通して何重にも見え、それが不規則な軌跡を描き次々とマリウスを襲う。
マリウス、光の剣に乗り、次々とかわしつつ、光の剣をサラに飛ばす。剣はすべて空を切り、マリウスは襲い来る光球を、かわし切れず、そのうちの一発を胸に受ける。
が、光球はマリウスの体を通りぬける、同時にマリウスの光の剣もサラに命中するが、それも通り抜ける。
マリウス(M) 「抜けた?」
  ✕   ✕   ✕
(フラッシュ)
ルナリア(異界)の聖なる泉。
サラ 「(笑みを浮かべ)私の勝ちだ……」
サラ、目を閉じたまま、下の方に視線を落とす。
サラ 「(何か見留め)お母さん……?」
  ✕   ✕   ✕
戻って。
足元に3体のハイブリスを踏みつけたエレイン、 サラとマリウスの空中戦を見ている。
サラの幻影はエレインの方を見ている。
エレイン 「サラなのか……?」
サラの残りの光球がすべてマリウスに打ち込まれる。マリウスは呆然とそれを見ている。光球はすべてマリウスを通過していき、サラの幻影は消える。   
  ✕   ✕   ✕
(フラッシュ)
ルナリア(異界)の聖なる泉。
目を開くサラ。
サラ、その場にへたり込む。
  ✕   ✕   ✕
戻って。
マリウス(M) 「あれはいったい……」
マリウス、よそ見してるところに、火球が飛んできて当たる。
マリウス 「ぬわっ!」
エンジン故障したプロペラ機のような音をたてて落下するマリウス。
ヘリウムボイスの声「制御不能! 制御不能! 脱出します!」
マリウスの頭からパイロット射出され、落下傘が開いて降りてくる。
マリウス、落下点で爆発。
エレイン 「ごめん、撃っちゃった」
エレインに向けて光の剣が何本も飛んで来る。エレイン、それをすべて寸躱しするが、気が付くと大木にピン止めされてる。
マリウス 「とんだ邪魔がはいりましたが、これならどうですか?」
姿を表すマリウス。
エレイン 「(ゆっくり、余裕をもって)ハイ、バック、ブラスター」
エレインの背後で大爆発が起きて、後ろの大木を消し去る。大木もエレインもいなくなり、光の剣が落ちる。
離れたところに立ってるエレイン。
エレイン 「口が開きっぱなしだよ、ぼうや」
マリウス 「(はっとして口を閉ざし)なるほどね、それなら……」
ハルクロ(オフ) 「お前の相手はこの俺だ、マリウス・トゥリート」
マリウス、振り返る。
ハルクロ、剣を肩に担ぐように構えて立っている。
マリウス 「あなたは?」
ハルクロ 「俺は異界の魔女の相棒、鬼神とでも呼んでもらおうか」
マリウス 「鬼神?」
エレイン 「誰?」
鬼神、ちょっとコケる。
マリウス、光の剣を5本出してハルクロに飛ばす。ハルクロは片手でそれをすべて払う。払われた剣は霧散する。
マリウス(M) 「魔法剣が消えた?」
ゆっくりと歩いてくるハルクロ。
新たに12本の剣がマリウスの周囲に展開する。
ハルクロ 「いいのかい? マリウスさんよう」
マリウス、 眉をしかめる(言葉の意味がわからない)。
ハルクロ 「俺の間合いだ」
ハルクロ、マリウスに斬りかかる。マリウスは大上段から振り下ろされる剣を、2本の光の剣で抑える、が力でへし折られ霧散、体を躱し、背後に飛び退く。
残り10本の剣がハルクロに襲いかかるが、ハルクロは舞うようにすべて叩き落とす。
ハルクロ、エレインに目配せする。
エレイン、小さくうなずいて、その場を離れる。
ハルクロ 「ソードマスター・マリウスたあ、ふざけた二つ名だ。だがお前の実力はそんなもんじゃねえ。どうせその二つ名も、隠し玉を悟られねえための目くらまし。てめえ、ハイブリス評議会なんかに潜り込んで、何をたくらんでやがる?」
マリウス、立ち上がって埃を払う。
マリウス 「やれやれ。なんのことやら僕にはさっぱりです」
ハルクロ、剣を横一文字にかまえ、マリウスを見据える。
ハルクロ 「来な、坊や。戦い方ってのを教えてやるよ」
マリウスからはオーラが吹き出し、エネルギー流のようなものが立ち上る。
上空からハルクロに向けて巨大な魔法弾が次々と打ち込まれ、今まで見た中でも最大級の爆発が起きる。

(終わり)第五話ここまで

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