第二話 ソラスにて

1. ルナリア(異界)エレインの家の前(早朝)
2頭の白黒のヤギがいる。テーブルの上にはバックパック。しゃがんでヤギに草を食べさせているサラ。
T:『第二話 ソラスにて』
サラ 「どうしたの? このヤギ」
エレイン 「わけてもらったんだ」
サラ 「もらっちゃったんだ。繁殖させるの?」
エレイン 「いや、どっちも女の子。繁殖は無理だけど、乳が絞れる」
サラ 「ふーん」
エレイン 「それじゃ、留守番よろしくね。1週間くらいで帰れると思う」
サラ 「ごはんは?」
エレイン、ヤギを指差す。サラ、ヤギを見る。
サラ 「うええーっ?」
ヤギ、鳴く。
SE:ヤギの鳴き声『メヘへー』
エレイン 「あ」
エレイン、 部屋に戻る。エレイン、フレア・シェルを持って出てきて、バックパックに詰める。
エレイン 「忘れるところだった」
サラ 「歪みを消しに行くの?」
エレイン 「山2つ超えた向こうに、大きいのがあるらしい。このあたりの歪みは消すしか無いけど、山奥だったら、練習にも使える」
サラ、期待の表情に変わる。
サラ 「(立ち上がり)空間に穴をあける練習?」
にっこり微笑んで返すエレイン。
サラ 「ソラスにも行けるようになるの? 私も行く!」
エレイン 「私のお荷物を増やすつもり?」
サラ 「お荷物にならない! 私、お母さんの相棒になる!」

2. ルナリア(異界)エレインの家の前(夕方)
夕方。バックパックが置いてあったテーブル前の椅子に座り、べったりと体を預けて寝そべったサラ。ぼんやりとヤギを見てる。
ヤギたちはそのへんの草を食んでいる。
SE:腹の虫
体を起こして、何か決意するサラ。
  ✕   ✕   ✕
時間経過を示すフェードを挟んで、ヤギの乳を絞るサラ。
  ✕   ✕   ✕
時間経過を示すフェードを挟んで、サラ、バケツから金属の大きなボトル(ネロ少年がパトラッシュと運んでいたもの)にヤギの乳を移す。
サラ、金属のボトルから、マグカップにヤギの乳をいれる。
サラ、マグカップに鼻を近づけ、臭いを嗅ぐ。
  ✕   ✕   ✕
草むらにゲロを吐いてるサラ。(ロングの後ろ姿)

3. ルナリア(異界)の山岳地帯
緩やかな丘陵に巨大な岩がゴツゴツと顔を出している。まわりには急峻な山岳。カメラは引いて、エレインが歩いてきた長い道のりを映す。
坂道を登り切るエレインの姿が見える。エレインが見上げると、歪みがある。
エレインは歪みの前に立ち、 カバンを置く。カバンと反対の手にはフレア・シェルを持っている。
エレイン、天を仰ぎ、何かに納得したようにうなずき、手に持っていたフレア・シェルを裏返す。
 ✕   ✕   ✕
少し離れた場所から、空間の裂け目が現れ、光が漏れだし、エレインの体が飲み込まれていくのが見える。
その後に巨大な地響きが伝わり、爆風が駆け抜ける。

4. フリオリ山のふもと
双眼鏡でのぞいたカットからスタート。フリオリ山のタッカー城が見える。タッカー城は雪と氷に閉ざされている。城からわずかに立ち上がる光が見て取れる。
デーニュ(24)(オフ) 「どう? 歪みに変化は?」
山道の途中に止められた馬車。あたりには雪が降り積もっている。二頭立ての馬車の御者台に座っているコーニュ。その下に立つデーニュ。コーニュは双眼鏡で山の上にある城を見上げている。
コーニュ(24) 「(双眼鏡を外し、振り向いて)わからない。さっき光ったっきり、今は落ち着いている」
馬車の中から、熱っぽい表情のアシュリンが顔をだす。
アシュリン(25)「さきほどの地響きの件ですか?」
デーニュ 「ええ、その件で」
コーニュ 「(キャビンの方を振り返り)姫はお休みになっていてください。また熱が上がりますよ」
デーニュ 「もう出よう。夕方に間に合わなくなる」
アシュリン 「待ってください。タッカーのお城の歪みに異変があったんですよね? 調べずにこのまま行くのですか?」
コーニュ 「あの城が廃墟になってずいぶん経ちます。あそこに守るべきものなど、残っていませんよ」
アシュリン 「そうですか……すみません……」
しょんぼりするアシュリン。
アシュリンの様子を見ているデーニュ。
デーニュ 「(コーニュに)今日は月明かりがある。夜通し走れば朝までには合流できる」
コーニュ 「(少し考えて)わかった。この先で馬車を回す」
デーニュはキャビンに乗り込み、コーニュ、馬に鞭を入れる。
アシュリン 「ありがとう、デーニュ」
デーニュ 「いまのうち休ませてもらいます。姫も休んでください」
アシュリン 「(咳をして)ええ、でも、歪みは私が見ます。私から報告したいんです、お兄様に」

5. タッカー城、玉座の間
氷に閉ざされた玉座の間。玉座の前には空間の歪みが揺らめいている。
歪みの前に倒れているエレイン。
エレイン、はっとして目を開け、体を起こす。
エレイン 「気を失ってたのか……」
エレイン、立ち上がりまわりを見る。
きらびやかな玉座やタペストリー、絵画や装飾扉などがエレインの目にとまる。
エレイン 「なんだここは……(圧倒されている)」
息が白い。
エレイン 「(ぶるっと震えて)さぶっ……」
エレイン、歪みの方へ近寄る。歪みは震え始め、地鳴りを響かせる。エレインの胸元から、フレア・シェルが反応して明滅する光が漏れる。
エレイン 「反応しているのか……」
エレインが数歩下がると歪みの地鳴りは鎮まり、フレア・シェルも落ち着く。

6. 同、廊下
車椅子を押すコーニュ。車椅子に座り、まわりをながめているアシュリン。歪が起こした振動が伝わってくる。
コーニュ 「また地震ですね」
アシュリン 「ええ。でもよかった。廃墟というから、何もかも壊れてしまってるのかと思っていました」
コーニュ 「場所によりますね」
アシュリン 「そうなんですか?」
コーニュ 「王の間、王妃の間、それに宝物庫あたりはめちゃくちゃですよ。歪みから化物が湧くとは言っても、盗賊も必死ですから」
アシュリン 「そうでしたか……。とりあえず、その歪みの様子だけ見て帰りましょう」

7. 同、階段
踊り場に車椅子が置かれている。
その下、アシュリンの手を取り、いっしょに階段を登るコーニュ。
手すりとコーニュの手を頼りに階段を登るアシュリン。

8. 同、使用人の部屋
エレインは窓に下がった濃紺のカーテンを引きちぎる。
エレイン 「さぶさぶ……」
エレインは引きちぎったカーテンを羽織り、息を吐いて手を温める。
エレイン 「ソラス、寒いなー。じいちゃん、あんな薄着で大丈夫だったかなあ」
エレイン、ワードローブを見留める。
カーテンをかぶり引き摺ったエレイン、ワードローブをのぞき、メイド服がずらっとぶらさがっているのを見つける。
エレイン 「おっ!」
エレイン、メイド服を引っ張りだして広げて見る。
エレイン 「サラとおそろいで着れるねえ!」
エレイン、ワードローブの中の小さな引き出しを見留め、開ける。中には金をベースにした大粒の宝石が入ったネックレス。
エレイン 「わーお!」
  ✕   ✕   ✕
時間経過のフェードを挟んで、ネックレスを身につけたエレイン。
エレイン 「后の部屋でもないよなここ……使用人の部屋になんで……?」
エレイン、下の段の引き出しをあける。
引き出しからは黄金色の光が溢れ、エレインの顔を染める。

9. 同、廊下(夕方少し前)
廊下には様々な甲冑が並ぶ(その中には後に鬼神と呼ばれるようになったハルクロが身に付けるものもある)。カーテンにくるまって、金のネックレスやティアラを乱雑に重ね、死霊の魔道士のような姿になっているエレイン。壁にかけてある剣をはずし、手にとってながめる。
二三度剣を振るって構えてみるエレイン。
何かの気配を感じ、手を止める。
廊下の奥の方から声が反響して聞こえてくる。
アシュリン(オフ)「このあたりは覚えています」
コーニュ(オフ) 「この絵は后のお気に入りだったそうですよ」

10. 同、廊下・アシュリン側(夕方少し前)
前のシーンと廊下の反対側。
アシュリンの車椅子を押すコーニュ。
コーニュ 「ここを荒らした化け物、王妃の亡霊だって言われていたんですよね」
アシュリン 「王妃の亡霊?」
コーニュ 「ええ、王をそそのかした使用人に復讐するために蘇ったんだって」
アシュリン 「そう言えば、聞いたことがあります」
コーニュ 「ま、歪みから化物が現れるなんて知られていなかった頃の話ですけどね」
コーニュ、角を曲がると、目の前に怪しい姿のエレインが立っている。エレインは前述の描写に加え、両手に剣を持ち、くるまったカーテンの隙間から、片目だけがらんらんと輝いてる。
アシュリンとコーニュ、言葉を失い、エレインを見たまま固まる。
エレインの胸元のフレア・シェルが怪しく明滅し、壁や天井がビリビリと震え、パラパラとコケラが落ちてくる。
コーニュの脳内で検索ページが開かれる。検索窓に文字が入力される。
T:『もし熊にあったら』
『検索する』ボタンにカーソルが移動し、押される。ページ遷移し、結果が脳内にずらずらと表示される。
T:(『もし熊にあったら』の検索内容)
コーニュ 「臨界距離は12メートル……」
アシュリン 「どうして熊で検索?」
カメラ切り返し、エレイン視点からアシュリンとコーニュを見る。
アシュリンとコーニュは身動きできずにエレインを見ている。
エレイン、アシュリンとコーニュの顔を交互に見比べる。
マリウス(N) 「エレインはここ数日、カッパ以外の人間を見たことがなかった」
エレイン 「カッパじゃない!」
コーニュとアシュリン、びくっとする。
コーニュ 「(生唾を飲んで。弱々しく)え、ええ、人間です……」
エレイン、両手に剣を持っていることに気が付き、投げ捨てる。
エレイン、コーニュとアシュリンに歩み寄ってくる。
エレイン 「(歩み寄りながら)ソラスの者だな? この世界に部屋をさがしに来た!」
カメラ切り返して、再度この様子をコーニュとアシュリン視点から。
エレインはスローモーションで両手に持った剣を投げ捨て、近づいてくる。
エレイン 「(スロー再生で)ソラスの者だな? この世界に部屋をさがしに来た!」
スローモーションで、コーニュ、涙目で車椅子を反転させ、逃げ出そうとするが、足がもつれ転ぶ。車椅子は手を離れ慣性で前に押し出される。
エレイン 「あ、だいじょうぶですか? 怪我はないですか?」
コーニュは立ち上がり、車椅子に駆け寄りアシュリンを抱きかかえ、俵担ぎにして逃げる。
エレイン 「あっ、待って!」
追いかけるエレイン。アシュリンの顔は後ろを向き、追ってくるエレインの顔が迫ったり離れたりする。アシュリンは熱でぼんやりしている。エレインの顔が王家の亡霊のように見え、アシュリン、気を失う。

11. 同、玄関(夕方)
馬車の御者台に座ってぼんやりしているデーニュ。
城の中から、気絶したアシュリンを抱きかかえたコーニュが飛び出してくる。
デーニュ 「ちょ! それ! 何があったんだ?」
デーニュ、御者台から降りてキャビンの扉を開ける。
コーニュ 「なんか出た!」
デーニュ 「なんかってなんだ?」
コーニュ、アシュリンを馬車の中に入れる。
デーニュ 「大丈夫ですか? アシュリン姫?」
コーニュ 「すぐに出せっ!」

12. 同、廊下(夕方)
二階の廊下を走っているエレイン。行く手を瓦礫に塞がれる。エレイン、窓の外を見ると、コーニュが馬車に乗ろうとしている。
エレイン 「あっ! 待って! ここはどこなの?」
エレイン、瓦礫の中の手頃な椅子に目を留める。

13. 同、玄関前(夕方)
2階のガラス窓が椅子で叩き割られ、ガラスがぱらぱら落ちてくる。
馬車に乗り込んで扉を閉めるコーニュ。
コーニュ 「(血走った目で)早くーっ!」
デーニュ、馬に鞭を入れる。馬は大きくいななき、馬車は走り始める。

14. ルナリア(異界)の村
とある家の玄関先に立っているサラ。
俯瞰で、家の人の姿は見えないポジション。
村の人 「食べ物を? そんなものあるわけないだろう、お菓子屋さんも引っ越しちゃったんだぞ!」

15. ルナリア(異界)のエレインの家の外
草を食んでいる2頭のヤギ。
テーブルの上にヤギ乳を絞ったボウル、そのとなりに本を開いて読んでいるサラ。
サラ 「米のとぎ汁で乳酸菌を作ります……」
  ✕   ✕   ✕
流し場で米を研いでいるサラ。
  ✕   ✕   ✕
ひなたに米のとぎ汁が入ったボウルが置かれている。
壁に背中を預けて座って本を読んでるサラ。
サラ 「砂糖と塩を入れて、数日放置……」
  ✕   ✕   ✕
夜、ボウルが放置されている。
部屋から灯りが漏れてる。
  ✕   ✕   ✕
翌朝、玄関の扉が開く。サラ、出て来てボウルを覗きこむ。
  ✕   ✕   ✕
ゲロを吐いてるサラ。

(ABパート分けるとしたらここまで)

16. フリオリの山道 分岐点
雪が積もった山道。
左は山頂、右は麓を示す道標がある。カーテンにくるまり、それを見ているエレイン。山頂と麓、順に仰ぎ見る。

17. フリオリの山道 岩陰
分岐点にいるエレインの様子を、少し離れた場所から双眼鏡で見ているデーニュ。
デーニュ 「俺たちを探している」
双眼鏡をはなすデーニュ。
デーニュ 「なんなんだあいつは……」
コーニュ 「わからん。亡霊かなんか? 俺たちを追ってくる」
デーニュ 「このままヤツを連れて帰るわけにはいかん。ここで叩こう」
コーニュ 「アシュリン姫は?」
デーニュ、馬車の中で熱を出して椅子に座り眠っているアシュリンを見る。
デーニュ 「馬車は木陰に隠して、馬を囮に使う。ヤツはどっちに行った?」
コーニュ 「おそらく、こっちに向かってきてる」
デーニュ 「二手に別れて追い込もう」
馬車の中から声がする。
アシュリン(オフ)「馬はそのままにしておいてください」
デーニュ、コーニュ、振り返る。
デーニュ 「アシュリン姫……」
アシュリンは熱でぼんやりした表情。
アシュリン 「私は大丈夫。(窓の外を見ながら)霧が隠してくれますから」
コーニュ 「霧が?」

18. フリオリの山道 分岐点
霧が出ている。
歩いているエレイン。
エレイン 「(足を止め)あれ? 上り坂?」
エレイン、あたりを見回す。
エレイン 「まいったなあ、何も見えない……」
エレイン、霧の中に、うっすらと影を見留める。エレイン、影に近づく。さきほどの道標が目に入る。
エレイン 「さっきもこれ見たよ! ぐるっと回ってただけかよ!」

19. 馬車の中
エレインの声が聞こえる。
エレイン(オフ)「さっきもこれ見たよ! ぐるっと回ってただけかよ!」
アシュリン、目を覚ます。
窓から外を見ると、エレインの姿がシルエットで見える。アシュリン、頭を下げて隠れる。
アシュリン 「霧よ……私を隠して……」

20. フリオリの山道
エレインの目の前の道標が霧に隠れる。
エレイン 「霧が濃くなった……」
エレイン、左右を見渡す。
エレイン 「どうなってるんだおーい! 誰かー! 誰かいませんかー!」
エレイン(M) 「チッ、異界の人たちは冷てえなあ……」
エレイン、大きく息を吸い込む。
エレイン 「(どすをきかせ)うぉーい! 聞こえてんだろーっ!」
その声が木霊する。
  ✕   ✕   ✕
この声を少しはなたところで聞いているデーニュとコーニュ。

21. 馬車の中
馬が怯えいななく。
揺れる馬車内。
アシュリン、決意し、剣を取る。
アシュリン 「ハルクロ様、私に力を」

22. フリオリの山道
左右を見ながら歩いているエレイン、目の前にアシュリンのシルエットを見留める。
アシュリンもエレインの姿を見留め、目を細め、手で霧を払うような仕草。
霧がゆっくりと晴れていく。
エレインの目の前に、剣を片手下段にかまえたアシュリンの姿が浮かび上がる。
アシュリン 「氷に閉ざされたとは言え、タッカーは我が宗主国。その城を荒らす者は、私が許しません」
エレイン(M) 「いや……、なんで喧嘩腰?」
アシュリン 「観念しなさい! 悪霊っ!」
アシュリン、回転して間を詰め、剣を片手で下から振り上げる。
エレイン、左手に持った短剣で受け流す。
アシュリン、次の一撃。
エレイン、体を翻しこれを躱し、距離を取る。エレインは馬車の方に位置する。
エレイン 「待って! 二人が戦うことなんてないと思うよ? ねえ、待って!」
アシュリン、大上段からの一撃。
エレインが避け、馬車に剣が食い込む。
アシュリン、剣を抜こうとするが抜けない。
アシュリン、手で剣を抜くのを諦め、馬車の扉にケンカキック、扉が歪んだところでノブを引くと食い込んでいた剣は落ち、それを拾い、エレインを睨む。
エレイン 「(少し怯えて)オニ……?」
アシュリン、朦朧としながらゆらゆらと近づいてきて、ぬるりと剣を振り上げ、横から叩きつけるる。
それを短剣で受けるエレイン。
その攻撃は軽くあたっただけで、アシュリン、一回転し、反対からもう一撃。
エレイン、これをまた短剣で受け、1歩後退。
アシュリン踏み込んで掬いあげるような突き、エレイン、余裕の表情でよけるが、アシュリン、前傾姿勢を取り、更に剣が伸びてくるる。
エレイン(M) 「伸びたっ?」
避けきれず左腕に傷を負う。雪の上にエレインの血が滴る。
エレイン(M) 「(傷を押さえながら)チッ、完全に向こうの間合いか……」
アシュリンの攻撃、エレインは体を開いて躱し前転、アシュリンの横をかすめ背後へ、反転し、アシュリンに跳びかかり、低い体勢からアシュリンの軸足に切りつける。
エレイン(M) 「すまん、ここで死にたくはないんだ」
アシュリン、とっさに軸足を浮かし、そのまま体を捻り、体を落としながらエレインに剣を浴びせようとする。
エレイン(M) 「はいい?」
エレイン、左手の短剣をアシュリンの剣に当ててかわすが、エレインも体勢が崩れている。
アシュリン、受け身を取ろうとするエレインの背中に手をつき叩き落とし、反動で左手に転がり、受け身を取り立ち上がる。
エレイン 「ガハッ!」
地面に這いつくばるエレイン、アシュリン 、振り返り、剣を高く構える。
アシュリン 「成敗いたします!」
エレイン 「しょうがない!」
エレイン、半身を起こしてアシュリンに向けて身構え、右掌を上に向け火球を生じさせる。
立ったまま熱で朦朧としたアシュリン。
アシュリン、崩れるように倒れる。
エレイン、しばし戸惑い、アシュリンに駆け寄る。
エレイン 「大丈夫か?」
息が上がってるエレイン、左手から血が滴る。顔を覆ってた布をおろし、汗を拭う。

23. 馬車の中
椅子に寝かされたアシュリン。
隣りに座るメイド姿のエレイン、左腕には包帯が巻かれている。
エレイン、鞄から薬を取り出す。
うっすらと目を開けて、エレインの姿を見るアシュリン。
アシュリン 「メイドさんがどうして……?」
エレイン 「気がついた? ちょうどよかった、(薬をアシュリンの口に押し込みながら)これ飲んで」
アシュリン、薬を飲む。
アシュリン、革の水筒を口に当てられ、その水を飲み、眠りにつく。
エレイン 「これでよくなるよ、きっと」
エレインの胸元のフレア・シェルが輝く。
エレイン、それに気が付く。
エレイン 「まただ。何かに反応している」

24. フリオリの山道
フレア・シェルを見ているエレイン。
エレイン、フレア・シェルを持って、ぐるっと周囲にかざす。
麓の方向に向けたときにフレア・シェルの反応は大きくなる。
エレイン 「この先に何かあるのか?」
馬車の前に脱ぎ捨てられているカーテンを拾い上げるエレイン。
  ✕   ✕   ✕
同じ場所。少し時間が経過して、デーニュとコーニュが戻ってくる。
デーニュ 「やっと戻れた」
コーニュ 「なんだったんだ、あの霧は」
デーニュとコーニュ、雪上に残された足跡、血痕、馬車についた傷を見る。
デーニュ 「これは?」
コーニュ 「誰かが戦ったあとだ」
デーニュ 「まさか姫が?」
デーニュ、馬車を覗き込み、眠ってるアシュリンを見留める。
デーニュ 「大丈夫だ」
コーニュ 「姫を頼む。俺はこの足跡をたどる」

25. 麓の断崖
雪もがまばらなフリオリの麓、渓流につき出た断崖に、空間の歪みが浮かんでいる。
エレイン 「これに反応してたのか……」
歪みに近づいてくるエレイン。
エレインは歪みの前まで来て、手に持っていたカーテンをその場に投げ置く。

26. 断崖を離れた場所からのぞける地点
断崖のエレインの様子ををとても離れたところから、目を凝らして見ているコーニュ。
少し靄がかかっている。
コーニュ、稜線に姿を隠し、双眼鏡を覗く。

27. 麓の断崖
エレイン、投げ捨てたカーテンにからみついてる金のネックレスを見留める。
エレイン 「あっ、サラのおみやげ……」
エレイン、カーテンを拾い上げて、ネックレスを取ろうとする。が、刺繍が絡まって取れない。
エレイン 「むきーっ! なんでこんなヘンな刺繍ばっかなんだよ、貴族の持ちモンは!」
エレイン、両手でカーテンを掴んで前後に揺さぶる。

28. 断崖を離れた場所からのぞける地点
遠くから双眼鏡で眺めているコーニュ。
デーニュがやってくる。
デーニュ 「馬車は安全な場所に移動させた。(双眼鏡をのぞいたままのコーニュに気がついて)何かあるのか?」
コーニュ 「メイドがさっきの悪霊と戦っている……」
デーニュ 「はあ?」

29. 麓の断崖
カメラはエレインへ戻る。
地面にカーテンを叩きつけるエレイン。突風に煽られ、カーテンがめくり上がる。
エレイン 「うっとおしい!」
エレイン、カーテンに魔法の火球を見舞う。笑みを浮かべるエレイン。
エレイン 「(表情一転)しまった! ネックレス!」
エレイン、カーテンを足で蹴って火を消し、しゃがんでネックレスをむしりとる。

30. 断崖を離れた場所からのぞける地点
デーニュコーニュの位置から双眼鏡でのぞいた景色。
靄のせいでシルエットしかわからないが、メイドが黒い影と戦っている姿が見える。
双眼鏡でその様子眺めているデーニュ。その隣で見守るコーニュ。
デーニュ 「ヤバいぞ、あのメイド……。悪霊を炎で焼いて足蹴にしてる……」

31. 麓の断崖
エレイン、ネックレスについていたガーネットの薔薇(ゲーム本編でサラがつけているもの)を手にして、笑みを浮かべる。
ガーネットの薔薇に歪みのゆらめきが映る。
エレイン、歪みを見る。
エレイン 「そろそろ帰らないとな……」

32. 麓の断崖
前のシーンと同じ場所。しばらく経った後、空間の歪みの前、馬車が来て止まる。
エレインの姿は無く、カーテンの燃え残りが放置されている。
歪みは先程より大きく、不安定。
馬車の御者台から降りるデーニュ。
コーニュ、キャビンから降りて、背後を警戒しながら歪みの方へ歩く。
デーニュ 「こんなところにも……」
コーニュ 「かなり不安定だな。あのメイドが何かやったのかな」
コーニュ、足元に焼け焦げたカーテンがあるのに気がつく。
デーニュ 「悪霊のか?」
コーニュ 「ああ、おそらくそうだな」
デーニュ 「メイドは?」
デーニュ、あたりを見回す。
コーニュ、空間の歪みを見つめている。
歪みが揺らぐ。
コーニュ 「ん?」
デーニュ 「どうした?」
歪みは大きく揺らぎ始める。
デーニュ 「(怯え)ひ、歪みがっ!」
デーニュとコーニュ、歪みを見据えたままあとに下がる。
歪みは裂け目となり、爆音、激震とともにメイド服姿のエレインが姿を表す。
エレイン 「なるほど! コツがつかめてきたぞ!」
怯えているデーニュコーニュ 。
エレイン 「(二人を見留め)あっ! あんたたちはさっきの!」
エレイン、デーニュコーニュに歩み寄る。
デーニュ+コーニュ「ひっ!」
エレイン 「身を寄せる場所を捜してるんだ。娘と二人で。いやあ、それが、こっちの世界は初めてで、勝手がよくわからんのだわー」
デーニュコーニュと対峙するエレイン。強めの風が吹く。
エレイン 「(ぶるっと震えて)さぶっ!」
エレイン、あたりを見回し、後ろに落ちてる焦げたカーテンを拾い上げる。カーテンには血糊が付いてる。
エレイン、カーテンにナイフを入れて引き裂き(焦げた部分を除去し)、羽織る。
デーニュ+コーニュ「ひいっ!」
エレイン、馬車を見留める。
エレイン 「あっ、(デーニュコーニュを見て)お姫様は元気?」
デーニュコーニュ、戸惑う。
エレイン、馬車に近寄り、中をのぞく。
うっすらと目を開けるアシュリンと目が合うエレイン。
エレイン 「よかった。(デーニュ、コーニュの方を振り向いて)私が助けたんだ」
デーニュとコーニュは、地面に落ちたカーテンの燃え残り、馬車の傷、エレインの二の腕の包帯、羽織った布に残る血糊、と視点移動し、怯えた作り笑いでコクコクと頷いてサムズアップ。

33. ルナリア(異界)のエレインの家の外
草を食んでいる2頭のヤギ。
サラ、テーブルの上にある木枠から、布に包まれた白い塊を取り出す。
布を開けると、できたてのチーズが現れる。
サラ、チーズの匂いを嗅ぐ。少し不審な表情をするが、もう一度嗅いで、少し考えて、納得した表情になる。
サラ 「悪くないかも……」
  ✕   ✕   ✕
草むらでゲロを吐いてるサラ。

(終わり)第二話ここまで

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