第一話 古家のもり

1. 絵本の世界
昔話風の絵柄で、家の前におじいちゃんとカッパがいる。
マリウス(N) 「昔々あるところに、おじいちゃんとカッパちゃんが住んでいました」
  ✕   ✕   ✕
一旦リアルな村長宅のクレアの部屋を差し込む。机に向かっているクレア。クレアは帳簿をつけていた手を止めて振り向く。(おじいちゃんから事の顛末の報告を受けている場面)
クレア(12) 「カッパちゃん?」
振り向いたクレアの視線の先には、おじいちゃんとカッパがいる。
  ✕   ✕   ✕
昔話風の絵に戻る。以降ずっと昔話風の絵柄で進行。川へ洗濯に来ているカッパ。
マリウス(N) 「ある日、カッパちゃんは川へ洗濯に」
  ✕   ✕   ✕
次の絵に移る。空間の歪み(空間が揺らめいて見える場所)の前に立つおじいちゃん。
マリウス(N) 「おじいちゃんは森の奥に空間の歪み(ひずみ)を消しに行きました」
  ✕   ✕   ✕
次の絵に移る。川に流されるカッパ。
マリウス(N) 「カッパちゃんは足をすべらせ、世界の果てまで流され」
  ✕   ✕   ✕
次の絵に移る。フレア・シェルの図解『こっちをかざす』と手描きで書かれたメモを見ているおじいちゃん。次に空間の歪みに向かってフレア・シェルをかざすおじいちゃん。
マリウス(N) 「おじいちゃんは間違えて、秘石フレア・シェルを逆にかざし」
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次の絵に移る。空間の裂け目に飲まれるおじいちゃん。
マリウス(N) 「空間の歪みは裂け目となって、おじいちゃんを飲み込んでしまいました」
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次の絵に移る。空間の裂け目が閉じて、もとの歪みになる。
マリウス(N) 「おじいちゃんはそのまま、ピンクのカバが住む異世界、ルナリアへと行ってしまったのでした」
  ✕   ✕   ✕
ピンクのカバが闊歩する世界にぽつんと降り立ったおじいちゃん。絵本の世界からリアルなルナリアの世界にクロスフェード。
マリウス(N) 「おしまい」
※ここからサンドイッチ回想に入る。(1話の終わりあたりにつながってるが、ユーザーは意識しないで見れる)

2. 村長宅 兄・姉の部屋の前の廊下
階段をどたどたと上ってくるクレア。部屋の前に駆け込んできて扉をノックする。
クレア 「妹です! 入ります! やばいものは2秒で隠してください!」
クレア、2秒待って勢いよくドアを開ける。
クレア 「おじいちゃん帰ってこないんだけど、どこ行ったか聞いてる?」
ベッドの中でふとんをかぶった兄(姉)、片手だけ出して『知らない』のジェスチャー。
クレア 「知らない、と」
ドアをバタンと閉めるクレア。
クレア 「(駆け去りながら)わかった! もうちょっと探してみる!」
ふとんをかぶって残された兄(姉)。
マリウス(N) 「これが次期町長。後にこの物語の主役になる人物。だけど、今回の物語ではまだ出番がない」
カメラはトラックバックしつつティルトアップして家の外に出る。家の俯瞰から、森へと移り、そこに揺らめいている『空間の歪み』へと寄っていく。更に寄るとその先にはルナリアの風景が見えている。
マリウス(N) 「物語は『ルナリア』と呼ばれる異世界で幕を開けます」
カメラは歪みの中へ入り、ルナリアの景色が眼前に迫ってくる。空間が重力で曲がったような特殊な効果で表現する。

3. ルナリア(異界)のエレインの家の前
森に囲まれた小さな家があり、その後ろにはピンクのカバが闊歩している。
少女(サラ)が立っている。その手元にはフレア・シェル(巻き貝に似た宝石)が輝き、サラはそれをを眺めている。
背後からエレインの声。
エレイン(35)(オフ)「また持ち出してる!」
サラ、はっとして振り返り、エレインの姿を見留める。
エレイン 「大事なものなのよ、返しなさい」
サラ(13) 「うん……。(返そうとするが、引っ込めて)ねえ、お母さん! 私にも使い方教えて!」
エレイン 「ダメ。返しなさい」
エレイン、サラの手からシェルを取ろうとするが、サラはかわす。
サラ 「ねえ! 今度の歪みは私に消させて? お願い!」
エレイン 「ダメよ、使い方を間違えるとたいへんなことになるんだから」
サラ 「たいへんなことって? 」
エレイン 「何度も言ってるでしょう? まちがった使い方をすると空間が裂けて……」
二人の背後の森、サラから見える方向、エレインの背後の遠くで鳥の群れが飛び立つ。
エレイン 「そこから光が降り注いで……」
サラ視点でエレイン舐めて背後の森で光が輝く。獣たちが騒ぎだす声。飛び立つ鳥。サラ、異変に気がつく。
エレイン 「ソラスっていう別世界から、化物が現れるの」
地響きが伝わってくる。エレイン、異変に気が付き、サラが見ている森の方を振り返る。
サラ 「(怯えながら)何が起きてるの……?」
森の方から獣の咆哮が轟く。
エレイン 「これは……」

4. ルナリア(異界)の森
森の入口。
決意して立つ、エレインとサラ。
エレイン 「行こう」
サラ 「うん!」
M:テーマ曲
T:タイトル 『セブンス・リバース ピンクのカバが住むところ』
ピンクのカバが見え隠れする森の中で、サラとエレインが探索するオープニング。以下を止め絵で見せる。
・森を進むエレインとサラ
・ふたりの背後、沼から顔をだす怪物
・怪物に追われるふたり
・物陰から怪物を待ち伏せるふたり
・魔法で怪物の目をくらませるサラ、火球を打ち込むエレイン
・怪物を仕留め、ご満悦のふたり
・奥に何か見つけたサラ。エレインはサラに呼ばれて振り返っている。
すべてのカットにピンクのカバが見えているが、エレインとサラは気がついていない 。

5. ルナリア(異界)の森 おじいちゃん遭遇現場
森の中におじいちゃんが倒れてる。怪我をして服は焦げて破れてる。
T:『第一話 古家のもり』
サラが走り込んでくる。
サラ 「何か倒れてる!」
おじいちゃんから距離をとって立つサラ。そこにやって来るエレイン。
サラ 「痛そう。怪我してる……」
エレイン 「そうね……って言うか、なんなのこの生き物……」
おじいちゃん、うめく。
おじいちゃん 「む、むぎゅう……」
おじいちゃんが持っているフレア・シェルが光を反射し、エレインそれを見留める。

6. ルナリア(異界)のエレインの家の前
家の前の粗末な木の檻に入れられ、全裸で倒れてるおじいちゃん。サラ、檻の前にしゃがんで心配そうに見てる。
玄関の扉があいてエレインが出てくる。
エレイン 「(靴紐を結び直しながら)その獣、噛みつくかも知れないから気をつけてね」
サラ 「あ、うん、気をつける。どこか行くの?」
エレイン 「寄り合い。一応報告しておこうと思って」
サラ 「(パッと明るくなって)じゃあケーキ買ってきて! 誕生日の!」
エレイン 「あっ、そうだったね、13歳おめでとう(何かに気がつき)、……ああ、でも、お菓子屋さん、村を出てったって」
サラ 「(沈んで)そう……じゃあケーキはなしか……」
エレイン 「でも、せっかく村まで降りるんだ。なんか買ってくるよ」
エレインが去っていく姿をしゃがんだまま見送るサラ。
おじいちゃん、檻にとびつき、ガタガタと揺らす。
サラ、その物音に気がついて檻を見る。
サラ 「気がついたのね、待ってて!」
サラ、部屋へ駆け戻る。
少し経って、サラ、犬の餌皿みたいなものに料理を盛って出てくる。
檻の下の隙間から、餌を差し出す。
おじいちゃんは警戒する。
サラ 「だいじょうぶよ。私が作ったの。おいしいから食べて」
おじいちゃん、警戒しながら、餌の臭いを嗅ぐ。
サラ 「ねえ、もしかしてあなた、ソラスから来たの?」
おじいちゃん、こくこくと頷く。
サラ 「あはっ、頷いた。わかってんのかなあ、私の言葉」
おじいちゃん、餌の臭いに恍惚となり、両頬に手を当て立ちあがる。その姿は全裸。サラの視線はおじいちゃんの股間へ。
サラ 「すごいなあ。仕草も体の作りも人間といっしょだ……」
おじいちゃん、餌の前に座って、手近な棒を拾って、箸がわりに持ち、両手を合わせる。
サラ 「あはっ、いちいち人間っぽい。獣のくせに」
おじいちゃん 「いただきます」
サラ、表情が消える。
サラ 「いただきます……」
おじいちゃん 「うまーいっ!」
サラ 「(立ち上がり)ちょっと待って! あなた人間? 人間なの?」
おじいちゃん 「この料理を作ったシェフを呼んでくれ! 礼を言いたい!」
サラ 「(真っ赤になって)キャーッ!」
サラ、部屋に駆け戻る。
サラ(オフ) 「なんか履くもの! 履くもの……! ないっ!」
時間経過後、浮き輪と団扇とその他日用品を持って部屋から出てくるサラ。檻の扉は開いている。中におじいちゃんがいないことを見留めるサラ。
サラ 「いないっ!」

7. ルナリア(異界)の村の寄り合い所 外観
寄り合い所の外観。村の人たちが話し合ってる声が聞こえる。
村の人A(オフ)「あんたの代になってからだ。消しても消してもすぐにアレが現れるようになったのは」
村の人B(オフ)「谷の方にも、あんたの一族はいるそうじゃないか。その人のほうがうまくやれるんじゃないのか?」

8. 世界の果ての洞窟
世界の果ての洞窟。奥には祭壇があり、その前で護摩を焚いているカッパ。
マリウス(N) 「その頃、カッパは世界の果てで、村人がカッパに見える呪いをかけていました」
カッパ、振り返って目が光る。カッパははちまきを締めていて、はちまきには2本の火がついた蝋燭が挟んである。

9. ルナリア(異界)の村の寄り合い所 中
車座になって、村の人たち(カッパ)4人とエレインが話し合っている 。
村の人B(カッパ)「あんたがダメってことは、娘の代になったら、どうなるんだこの村は」
村の人C(カッパ)「あの娘。この前も勝手に泉に入ったそうじゃないか。あんたからも注意してもらわんと困るよ」
村の人A(カッパ)「お菓子屋さんも引っ越してしまったんだぞ」
エレイン(M) 「カッパに見える……」
その後もカッパは口々に何か喋る。エレインは肩を落としたまま、。ゆっくりとフェードアウト。

10. ルナリア(異界)の村の寄り合い所 外観
寄り合い所を出るエレイン。

11. ルナリア(異界)の山道
山道をとぼとぼと登るエレイン。手にはスイカをぶら下げている。
サラの声が聞こえる。
サラ(オフ) 「お母さーん!」
エレイン、声に気が付き、手でひさしを作って仰ぎ見る。
サラと浮き輪を身につけたおじいちゃんが走ってくる。
サラ 「人間! 人間だったの、これ!」
サラ、両手でおじいちゃんを指す。
おじいちゃん、ポーズを決める。
エレイン 「ええっと、一箇所突っ込んでもいい?」
サラ 「浮き輪でーす」
エレイン、呆れたように微笑む。

12. 同、開けたところ
木陰に粗末なベンチがある。座ってスイカを食べてるエレインとサラとおじいちゃん。
サラ 「まさか人間だなんて思ってもみなかったけど、あっ、ごめんなさい! いい意味で、人間離れしてるってこと!」
おじいちゃんは無心にスイカを食べていて無反応。サラはエレインの顔をのぞきこむ。
サラ 「(目を輝かせ)異界から来たんだよね、このおじいちゃん! だったら……」
エレインはスイカを手にとったままぼーっとしている。サラ、エレインに無視されてむっとした表情になる。
エレイン 「(サラの言葉が途切れたことに気が付き)えっ? なあに? 聞いてなかった」
サラ 「ハア(ため息)。また何か言われたの?」
エレイン 「えっ、何かって、寄り合いで? んーん、なんでもないの。(気を取り直し)て言うか、あんたは余計なこと心配しないの」
サラ 「だって。どうせ私のことでしょ?」
エレイン 「そんなことないって! で? なに? 異界から? なんだっけ?」
サラ 「あのね、このおじいちゃんも向こうの世界で、歪みを消す仕事をやってるんだって。それで、(おじいちゃんの方を向いて)うまく使うと、ソラスとルナリアを行ったり来たり出来るんだよね?」
おじいちゃん 「そうそう、できるの。石にも心があって、それに気持ちを合わせるの」
エレイン 「心? 心ねぇ(軽い嘲り)」

13. ルナリア(異界)のエレインの家の前(夕方)
夕空がかき曇っていく。
雨粒が地面に落ちてくる。鳥たちの鳴き声。遠くに雷鳴。突然激しく雨が降り始める。
エレインとサラとおじいちゃんが走ってくる。三人はエレインの家に駆け込む。が、おじいちゃんは玄関に辿り着く前に転んで、家に入れない。

14. ルナリア(異界)のエレインの家(夕方)
サラは濡れた衣服の雫を払っている。
サラ 「ねえ、お母さん、私たちもおじいちゃんの世界に行かない?」
エレイン 「なにバカなこと言ってるの。住む場所ってのは、選べないの。場所が私たちを選ぶの」
サラ 「何よそれ、わけわかんない。ねえ、おじいちゃん、行ってもいいでしょう?」
言うと同時に後ろを振り向くが、人の姿はない。
サラ 「あれ?」
サラの頭に雨漏りの水滴が落ちてくる。
サラは天井を見上げる。
天井は濡れて雨水がつたい、その雫が落ちる。
サラ 「雨漏り……」
エレイン 「それに私、この家好きだよ。住めば都って言うじゃない」
エレイン、バケツを2つほど床に置く。
水滴が落ちて、バケツの底を叩く。
サラ 「私はこんな家……」
エレイン、別のバケツを1つサラに渡す。
水滴が床に置かれたバケツを順に叩く。
サラ、バケツを差し出すと、そこに水滴が落ちる。
続けてエレインも同様に差し出し、そこに水滴が落ちる。
エレイン 「確かにおんぼろだけどさ、村があってこその私達だよ」
同様にもう一巡、バケツ1,バケツ2,サラが差し出したバケツ、エレインが差し出したバケツ、と水滴が落ちる。
それに合わせてサラとエレイン視線を動かし、そのあとにバケツのないところに水滴が落ちるのを目で追う。
サラ 「あっ」
エレイン 「今日は一段とひどいね、(サラにコップを差し出し)ほら」
サラ 「うん、(コップを受け取り)あっ、お母さん、あっちも」
エレイン 「ん(了解)」
サラとエレインは落ちてくる水滴に対して身構える。
床のバケツ1、同バケツ2、サラのバケツ、エレインのバケツ、サラのコップ、と来て最後にエレインの持ってる仏壇の鐘にチーンと水滴が落ちる。これを二人で順に目で追って、最後のチーンの後、サラはエレインの顔を見る(なにそれ、って感じで)。
同じ順番でもう一巡、サラはエレインの顔を見たままエレインだけ順番にしずくの落下を追う。最後に仏壇の鐘にチーン。
サラ 「(突然キレて立ち上がり)だからこーゆードリフのコントみたいなのやりたくないの! 私、一生ここでお母さんとこんなコントやって暮らすの?」
エレイン 「(たじたじになりつつ)ああ、ごめんごめん、それよりおじいちゃんは?」
サラ 「忘れてた!」
玄関の扉がガラッと開いて、おじいちゃんがチャーリー浜のメガネをかけて立ってる。振り返るサラとエレイン。
おじいちゃん 「ごめんくさい!」
サラ 「だから昭和のギャグはやめて!」

15. 村長宅 兄・姉の部屋の前の廊下(朝)
階段をあがってくる足音。
クレア、部屋の前に駆け込んできて扉をノックする。
クレア 「妹です! 入ります! やばいものは2秒で隠してください!」
クレア、 待たずにドアを開ける。
布団ががばっと舞い上がり、兄(姉)の姿を覆う。
クレア 「昨日からおじいちゃん帰ってこないんだけど! 丸一日たってるんですけど!」
ベッドの上で布団をかぶった兄(姉)。兄(姉)は片手だけ出して『知らない』のジェスチャー。
クレア 「(ドアをバタンと閉めて、駆け去りながら)わかった! もうちょっと探してみる!」
布団をかぶって残された兄(姉)。

(ABパート分けるとしたらここまで)

16. ルナリア(異界)の聖なる泉
荘厳な雰囲気のある森の中の泉。
サラ、泉に向かって目を閉じて手のひらを広げ、周囲の霊的エネルギーを感じ取っている。傍らにはじいちゃんが座ってる。
サラ 「(目を閉じたまま)エロールの声が聞こえるの」
おじいちゃんは足を池にちゃぷちゃぷしていてる。
サラ 「(目を閉じたまま)エロールってわかる? この世界を作った、神様みたいな存在。この話、ルナリアだけかな?」
じいちゃん 「エロール、聞いたことあるよー」
サラ 「(目を閉じたまま)ああ、じゃあいっしょだ。そのエロールの声がね……聞こえるっていうか、見えるっていうか……」
ジャバウォックの咆哮が遠くから轟く。おじいちゃんはその声に気が付き、声の主の姿を探す。
じいちゃん 「むにゃ?」
サラ 「(目を開けて、おじいちゃんを見て)あの声はジャバウォック。いつも来るのよ」
サラ、ジャバウォックの声がしたほうを見る。
サラ 「みんな怖がるけど、悪い子じゃないよ」
サラとおじいちゃん、森を眺める。
木々の向こうにジャバウォックの姿が見えて、悠々と歩いていく。
サラ 「もう行こっか。村の人にみつかったら怒られちゃう」

17. ルナリア(異界)のエレインの家の外
屋外のテーブルに座ってお茶を飲んでるサラ(マグカップ)とおじいちゃん(犬皿)。
エレインが来て、サラの隣りに座る。
エレイン 「泉には行くなって言ってるでしょ?」
サラ 「(うつむいて)だって……」
エレイン 「だって、何?」
サラ 「なんでもない」
エレイン 「ねえ、聞いて、サラ。村のルールにはしたがって。あなたは嫌かも知れないけど、ここが私たちの村。故郷。私たちが求めるものがあるし、私たちが求められる、ただひとつの場所なの」
サラ 「求められるって?」
エレイン、呆れと戸惑いが混じった表情。
エレイン 「それは……」
  ✕   ✕   ✕
昼間の屋外、戯画風の背景に変わる。
テーブルに足を組んで座り、陶器のジョッキでビールを飲むエレイン。隣でマグカップで何か飲んでるサラ。
カッパの姿をした村人がスライドして入ってくる。
村人 「空間が歪んでる! 治してくれ!」
エレイン(オフ) 「とか……」
村人のセリフは画面上のキャラクターのセリフで、エレインとサラのセリフはそれを回想しながら画面外の二人がコメントしている。以降も同じく。
村人、スライドして退場。
別の村人、スライドして入場。
村人 「空間の裂け目からモンスターが現れた! 倒してくれ!」
エレイン(オフ) 「とか……」
村人、スライドして退場。
サラ(オフ) 「あと……」
別の村人、スライドして入場。
村人 「シャツのボタンがとれた! つけてくれ!」
エレイン(オフ) 「これなー」
サラ(オフ) 「自分でつけろっての」
村人 、スライドして退場。
別の村人とその子ども、スライドして入場。
村人 「この子のお母さんになってくれ!」
エレイン(オフ) 「いやいやいや」
サラ(オフ) 「私、あの子嫌いなんだけど」
村人とその子ども、スライドして退場。
別の村人、スライドして入場。
村人 「お菓子屋さんも引っ越してしまったんだぞ」
エレイン(オフ) 「ってそれ、私関係なくない?」
サラ(オフ) 「こっちだって迷惑してんだからね」
村人、スライドして退場しかかるが戻ってくる。
村人 「パン屋が引っ越してもお菓子屋さんがいればいいじゃないって、言ってたくせにっ!」
サラ(オフ) 「戻ってくんなー!」
エレイン(オフ) 「すっこんでろ!」
村人、スライドして退場。
別の村人、スライドして入場。
村人 「お宅の娘をうちの嫁に欲しいんだが!」
エレイン(オフ) 「これ、さっきの親子と同じ人」
サラ(オフ) 「ていうか、ぜんぶカッパに見えるんですけど」
村人、スライドして退場。
別の村人、スライドして入場。
村人 「バーカ!」
エレイン(オフ) 「おまえがバカだろ!」
サラ(オフ) 「なんかすごい腹立ってきた」
村人、スライドして退場。
別の村人、スライドして入場。
村人 「ヤギ2頭生まれたんだけど、いらない?」
エレイン(オフ) 「いらねーっ」
サラ(オフ) 「(かぶせて)いらねーっ。っつーか、いつまで続くのこれ?」
  ✕   ✕   ✕
戻って。
エレイン 「でもまあ、いい思い出になるわ、きっと」
サラ 「ならない」
犬皿に顔をうずめるようにして牛乳を飲んでるおじいちゃん。

18. 同、家の中(夜)
薬草をすりつぶした乳鉢。
サラはおじいちゃんの背中に軟膏を塗った湿布を貼る。玄関から村人とエレインの声が聞こえる。
村人(オフ) 「そんなわけで、頼むよ」
エレイン(オフ) 「わかりました、すぐ行きます。場所は?」
サラ、小声でおじいちゃんに尋ねる。
サラ 「こんどお母さんに内緒で、石の使い方教えて」
おじいちゃん 「石?」
サラ 「ええっと、フレア・シェルって言うんだっけ? 空間の裂け目を広げたり消したりする石」
おじいちゃん 「いいよー。怪我が治ってからねー」
サラ 「そうだね、ソラスに帰る前にね」
あわただしくエレインが来る。
エレイン 「ジャバウォックが出たらしい。行ってくる」
サラ 「(驚いて)行ってくるって? 倒すの?」
エレイン、棚の上のフレア・シェルを手に取る。
エレイン 「(おじいちゃんに)裂け目を消すのは苦手だ。私にとってこの石はもっぱら戦闘用」
サラ 「ジャバウォック倒しちゃダメ!」
エレイン戸惑う。
エレイン 「(少し考えて)ねえ、サラ。ここは私たちが唯一住める場所でしょ? ここを守るためよ。少しは嫌なことも我慢して」
サラ 「いやだそんなの。(怒りながら)人間が生きていくためには、何をしてもいいの?」
エレイン 「ハァ(ため息)。ごめん、急いでるの。後にしましょう」
エレイン、外に出て行き、扉が閉まる。
サラ 「(締まったドアのほうに)ジャバウォック、倒さないで! (一拍おいて)お母さん!」
一拍置いて、サラ、立ち上がって玄関に向かう。

19. ルナリア(異界)の村の広場(夜)
広場に立つ村人5人(カッパ)と、エレイン。
SE:ジャバウォックの咆哮
エレイン 「まだ遠いようだな」
村人(カッパ) 「ああ、でもこないだは一瞬で降りてきた」
遠くの山から魔法の弾が空へ向けて3発、長い尾を引いて放たれる。
エレイン 「(魔法弾見留め)あれは?」

20. 同、山の中の開けた場所(夜)
ジャバウォックが 警戒している。それと対峙して、サラ、片手を高く突きあげている。ジャバウォックがサラを威嚇する。サラ、空に向けて魔法弾を放つ。ジャバウォックは怯む。
サラ 「こっちはダメ。殺されちゃう」
ジャバウォック、警戒音を出して鳴く。
SE:ジャバウォックの警戒音
サラ 「大丈夫。痛くしないよ」
  ✕   ✕   ✕
別の場所、ほかのジャバウォックがその声を聞き顔をあげる。
  ✕   ✕   ✕
戻って、闇の中から、新たに2匹のジャバウォックが現れる。
サラ 「なんで増えるのよう」
サラ、3発の魔法弾を空に向けて放つ。
ジャバウォックは一瞬怯み、すぐに戦闘態勢を取る。
サラ 「助けてあげるのに。私がみんなのこと、助けてあげるのに!」
サラ、両手のひらで胸の前に三角形を作る。そこにいままでよりも大きな光が集まってくる。

21. 同、村の広場(夜)
広場から魔法弾が見えたあたりを眺めるエレイン。地面からオーロラの壁が噴き上がるのが見える。村人たちもそれを見ている。
エレイン 「マナウォール? サラなの?」
村人 「泉の方だな……」
エレイン、駆け出す。

22. 同、山の中の開けた場所(夜)
円柱状の虹色の光の壁、マナウォールに囲まれたジャバウォック。ジャバウォックたちはキョロキョロ向きを変え、威嚇して壁に噛み付こうとする。唸り声をあげるもの、足元の土を蹴るものもいる。
サラ 「落ち着いて、お願い……いじめないから……」
ジャバウォック、サラを威嚇する。サラは魔力を発している手に力を込める。マナウォールの輝きが増す。

23. 同、山道(夜)
走るエレイン、木々の切れ間からマナウォールが見える。

24. 同、山の中の開けた場所(夜)
ジャバウォックの様子は変わらず。
サラ 「(疲れて)ふぅ……」
サラ、少し手が下がる。
マナウォールの光が弱まる。
サラ 「でもこれ、どうすればいいんだろう……」
威嚇してくるジャバウォック。サラ、涙をこぼす。
サラ 「助けてあげるのに……」
マナウォールの光が途切れて消えかける。そこに踏み込んでくる誰かの足。視線を上げると、その手にはフレア・シェル。続いて全身が見える、その姿はおじいちゃん。
サラ 「おじいちゃん?」
おじいちゃん、サラの隣に立って、サラの左手を取る。
フレア・シェルが輝き、そのエネルギーがおじいちゃんを介してサラに伝わる。
マナウォールが激しく輝き始める。
サラ 「これは?」
おじいちゃん 「石と気持ちをひとつにするんじゃ」
サラ、真剣な表情で小さく頷く。マナウォールが強く輝き始める。

25. 同、山道(夜)
エレイン、輝きを増すマナウォールを見留め、足を止める。
エレイン 「マナウォールが……」

26. 同、山の中の開けた場所(夜)
怯えているジャバウォック。
おじいちゃん 「さあ、逃してやってくれるか?」
サラ 「やってみる」
サラ、目を閉じて意識を集中する。マナウォールの向こう側が開き始める。ジャバウォックたち、それに気がついて、そちらから駆け去っていく。

27. 村長宅 兄・姉の部屋の前の廊下(朝)
クレア、部屋の前に駆け込んできて扉をノックする。
クレア 「妹です! 入ります!」
クレア、扉を開け部屋に飛び込み、扉は閉まる。
クレア(オフ) 「やばいものは2秒で隠……し……あっ……」
扉が開いて、クレア、出てくる。
クレア、扉を閉め、扉に背を向ける。
クレア 「(部屋の中に聞こえるように)今朝もまだおじいちゃん帰ってきてないんだけどー! どこ行ったか聞いてないー?」
クレア、そっと扉を開いて中をのぞく。
クレア 「『聞いてない』、と。そうだよね、昨日も言ってたよね」
クレア、扉を閉め、扉を背にする。ほっと溜息をつくクレア。クレア、扉を開けて、中をのぞく。
クレア 「私さっき、何も見てないからね」

28. ルナリア(異界)の村の寄り合い所 外観
俯瞰気味のロング。鶏が数羽放されてる。
中から村人(カッパ)が出てきて、飼料入れに菜っ葉の切れ端を入れる。別の村人(カッパ)が来て、軽く挨拶を交わして家に入っていく。

29. ルナリア(異界)の村の寄り合い所 中
窓から差し込む光。台所でお湯が湧いている。車座になって、村の人たち4人とエレインが話し合っている。
村の人たちはカッパに見える。
村の人A(カッパ)「そもそもあんたの娘が、モンスターにちょっかいを出すのが悪いんじゃないのか?」
村の人B(カッパ)「人とはろくに話もせんし」
村の人C(カッパ)「しかもなんだあの魔力は、あれでいずれこっちがやられるかも知れんのだぞ」
村の人D(カッパ)「お菓子屋さんも引っ越してしまったし!」
エレイン 「カッパに見える」
村の人A(カッパ)「(立ち上がり)カッパとはなんだ! 失礼な!」

30. ルナリア(異界)の村はずれ(夕方)
空間の歪みがある。おじいちゃんは歪みのそばに立ち、サラとエレインはおじいちゃんの方を向いて立つ。
おじいちゃん 「じゃあ、わしはこれで帰るー」
サラ 「私もすぐ行くね!」
エレイン 「(制するように)サラ!」
おじいちゃん 「んー、もっともっと練習してからじゃな」
サラ 「する! 歪みを消したり広げたり、なんでもできるようになって、おじいちゃんちに遊びに行く!」
エレイン 「ハァ(呆れ気味のため息)」
おじいちゃん 「ひょひょひょ。それじゃあ、スイカでも買っておくかのう」
おじいちゃん、歪みにフレア・シェルをかざす。歪みが空間を四次元軸方向にぐいっと押し込むように深くなる。周囲の空が暗くなり、旋風が巻く。
エレイン、不安そうに、サラ、ワクワクした顔でそれを見ている。
おじいちゃん、ふと何かを思い当たり、フレア・シェルをかざすのをやめ、エレインに振り返る。
おじいちゃん 「フレア・シェルを使う時は、気をつけてな」
エレイン 「どうしたの? 急に」
おじいちゃん 「フレア・シェルは自己犠牲の石と言うて、気持ちを合わせすぎると、闇にとらわれる」
神妙な面持ちで聞いているエレイン、サラ 。
おじいちゃん 「娘をそれで失い、娘婿も絶望して村を出た。残されたのは二人の孫だけじゃ」
サラ 「(決意の目)それじゃ、私たちがおじいちゃんの家族になる!」
エレイン 「(あきれたように)サラ……」
おじいちゃん 「それじゃあな」
おじいちゃん、シェルを歪みにかざす。
サラ 「(おじいちゃんに)この歪み、消さないでね! すぐ行くから!」
おじいちゃん、にっこり微笑む。
歪みは空間を押し出し、激しい地響きを伴い別世界への裂け目となって、おじいちゃんを飲み込む。
時間経過後、裂け目は消え、もとの空間の歪がゆらめいている 。
サラ 「(エレインの腕をつかみ)練習しよう! 練習!」
エレイン 「自己犠牲の石かー。嫌いなんだよ、そう言うのー」
サラ 「だからうまく使いこなせないんだよ、お母さんはー。私に貸してって言ってるでしょう?」

31. 村はずれ(ソラス)(夕方)
空間の歪みがある。歪みを見つめているおじいちゃん。空間の歪みの中にかすかにエレインとサラの姿が見える。
おじいちゃん 「来ちゃいかんよ。こっちは戦争のさなかじゃ」
おじいちゃん、フレア・シェルを歪みにかざす。歪みからフレア・シェルにエネルギーが吸い取られ、歪みは小さくなって消滅する。
クレアの声が聞こえる。
クレア(オフ) 「あっ!」
おじいちゃん、声に気がついて振り向く。クレアが駆けてくる。
おじいちゃん 「あー、クレアー。元気にしとったかー?」
クレア 「元気にしとったかーじゃないわよ、いままでどこに行ってたのよ、心配してたんだからね!」
おじいちゃん 「歪みを消してたんだよー。ところであの、もう一人の兄だか姉だかはどうしとる?」
カメラ引きながら、フェードアウトにかぶせつつ。
クレア 「兄だか姉だかって、覚えてないの? て言うか、なんで浮き輪?」

32. ルナリア(異界)の村はずれ(夕方)
前の同場所のラストと同ポジ。
歪みがゆらめいている前で、うんざりした表情のエレインと、その袖をつかんでるサラ。
サラ、しきりにエレインに何かを訴えているが、その横で歪みはだんだん小さくなり、消える。
サラ、歪みを指さし、エレインに何かを訴える。サラが指差した場所には歪みはない。ふたりは歪みが消え去ったことに気がつく。
サラ 「消えてるーっ?」
愕然とするサラ。サラの目から、大粒の涙がポロポロとこぼれる。
サラ 「消さないでって言ったのにーっ」
カメラ引いて、広大な森の中に開けた平地にある集落、そのはずれの家、サラの声が響く。
サラ 「おじいちゃんのバカーっ」

(終わり)第一話ここまで

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