第六話 ハッピーバースデイ・サラ

1. ヴァポラム密林、空間の裂け目
空間の裂け目がある場所。
裂け目の中には禍々しい黒い渦が見える。
T:『最終話 ハッピーバースデイ、サラ』
グリアスは裂け目に対してシャドーボクシングを行い、ベルカミーナが見守り、更に外側にハイブリスの兵が6名ほど控える。
地鳴りが響く。
ベルカミーナ 「何事だ、いったい?」
数人のハイブリス兵が息を切らしてたどり着く。
ハイブリス 「お、鬼っ! 鬼が現れました!」
ベルカミーナ 「鬼だと?」
ハイブリス 「恐ろしい剣の使い手で、すでに100はやられました。逃亡するものも出ております!」
ベルカミーナ 「愚か者どもが! 腕のたつ賞金稼ぎを雇っていると聞いたが? どこに行った!」
ハイブリス 「そちらも何者かに抑えられているようです」
ベルカミーナ 「(グリアスに)呪われし闇の申し子よ! その裂け目、しっかりと広げておくんだぞ! ここが片付いたらすぐにルナリアを攻める!」
グリアス 「ぐもおおおおおおおっ!」
ハイブリス 「(グリアスの雄叫びにかぶせ)士気が下がっております。これ以上の戦闘はもはや……」
ベルカミーナ 「私が前線に出る! 兵を集めろ! 肉の壁どもを!」

2. フローレンス城 アシュリンの部屋
アシュリン、熱にうなされ、呻いている。
アバラボーンズA 「大丈夫ですか? アシュリン姫!」
アバラボーンズB 「どうしたんだ? 熱は下がらないのか?」
アバラボーンズA 「ああ、さっきからどんどん上がっていく」

3. ヴァポラムの草っぱら
ヴァポラムの主戦場から少し離れた草っぱら、木々はまばらで丘に1本の木がある。ドレッドとファデリーが対峙している。ドレッドの服は1箇所切り裂かれてる。ドレッドは剣を構え、ファデリーは剣を抜いていない。
ドレッド 「どうしても俺を通さねえ気か?」
ファデリー 「ここが見せ場なもんでね」
ドレッド 「フッ、てことは俺もそうなるんだな」
ファデリー 「いや、お前、見せ場だらけだったろ」
ドレッド 「あれは見せ場じゃねえ!」
ドレッド斬りかかる。スローモーションで、ドレッドはファデリーの手の動きを見ている。
ドレッド(M) 「まだ抜いてねえ……」
ファデリー、体を1回転させ、頭を少し下げる。ドレッド、剣を持つ手をゆるめ少し長めに握り直し、斬り下ろす。が、ファデリーは体をかわす。ドレッド、前方1回転してフィニッシュ、すぐに振り返り、ファデリーを見るが、剣は抜いていない。ドレッドの服にはもう1本破れが増えてる。
ドレッド(M) 「(破れたとこを指でたどりながら)いつ抜いたんだ?」
ファデリーは振り返る。
ファデリー 「次はこちらから行くぞ」
ドレッド 「ハッ! イヤなこった!」
ドレッド、後ろ向きに飛び退くが、着地点で空き缶を踏む。
ドレッド 「ぬわっ!」
そのままよろめいて、こんどはクワを踏んでしまうが、起き上がってくるクワの柄をファデリーが剣で止める。
ファデリー 「てめえ、またそんなネタで逃げようってのか?(怒り)」
ドレッド 「別に逃げてるつもりなんかねぇ」
ドレッド、足元のクワの柄を抑えたファデリーの剣を踏みつける。ファデリーの手から剣が離れ、ドレッド、斬りかかる。
ドレッド 「俺の勝ちだーっ!」
ファデリー、別の剣で受ける。
ドレッド 「てめえ! 何本持ってやがる!」
ファデリー 「さあね」
両者飛びのいて離れる。剣を構えたドレッド、ファデリー、余裕こいてさっきの剣を拾おうとする。
ドレッド 「させるかーっ!」
切りかかってくるドレッドをひょいと避けるファデリー、切り返して連打してくるドレッド、ファデリー、後退しつつかわす。
ファデリー、大木の後ろに回りこむ。(スローモーションで)木の後ろから、右へ左へ顔をだし、ドレッドもそれにあわせて、右へ左へとふられる(昔のアイドルイメージビデオ的な)。光がキラキラしてる。
ドレッド 「待てー!」
(スローモーションで)木の周りを回って追いかけあって、笑いながら逃げるファデリー、同、追うドレッド。
SE:エコーの効いた笑い声

4. 同、ポイントC
ハイブリス側の一時拠点。監視用の足場が組まれ、そこにベルカミーナと参謀役のハイブリスが陣取る。
周囲を警戒するハイブリスたち。
別のハイブリスが報告に来る。
ハイブリスA 「た、たいへんです! 全裸のむくつけき男たちがこちらへ向かってきます!」
ベルカミーナ 「なんだとう!」
ベルカミーナ、期待した顔で望遠鏡を受け取って、のぞく。
ベルカミーナの期待の顔が、絶望の顔に変わる。
ベルカミーナ 「(望遠鏡を叩き返し)あれはただのたるんだ小汚い変質者のおっちゃんの群れだ! 情報は正確に伝えろ!」
ハイブリスB 「来る! 応戦するぞ!」
ベルカミーナ、ふと何か思い出す。
ベルカミーナ 「待て! 奥院ではいま、被服を媒介して爆発的に増殖する殺人ウイルスを開発中だ。ヤツら、先にそれを完成させた可能性が……」
ハイブリスC 「被服を媒介……だからヤツらは裸で……」
ベルカミーナ、何か思いつく。
ベルカミーナ 「そうだ! お前たちも全裸で応戦しろ!」
ハイブリスB 「おお! なるほど! その手がありましたか!」
ハイブリスC 「みんな脱げーっ! 脱いだら特攻だーっ!」
ハイブリスA 「おーっ!」

5. 世界の果ての洞窟
世界の果ての洞窟。奥の祭壇の前で、護摩を焚いているカッパ。
マリウス(N) 「その頃、カッパは世界の果てで、全裸の男たちがカッパに見える呪いをかけていました」
カッパ、振り返って目が光る。

6. ヴァポラムの空間の歪 ポイントCのアニエス側
アバラボーンズ(カッパ)「敵も全裸で応戦してきましたーっ!」
アニエス 「なぜだーっ!」
ハイブリスの軍勢と、アバラボーンズの軍勢がぶつかり合う。が、アニエスの後ろ姿を除いてすべてカッパに見える。
アニエス 「しかもどう見てもカッパーっ!」
アバラボーンズ(カッパ)「きゅうりをぶちこんでやれーっ!」

7. 同、ポイントC
カッパの群れが戦っている姿を見ているベルカミーナ。参謀役のカッパに尋ねる。
ベルカミーナ 「これでは戦況がわからん! 鉄騎隊で一気にケリをつけろ!」
ハイブリス(カッパ)「ハッ! そろそろ到着する頃かと」
ベルカミーナ 「あとは賞金稼ぎだ! 大金をつぎ込んでいると聞いたが、何をしてるんだ?」
ハイブリス(カッパ)「西エリアで死闘を繰り広げているとのことです!」

8. 同、草っぱら
大木を挟んで息を切らして座る、ファデリーとドレッド。
ファデリー 「ハイブリスにはいくらで雇われてる?」
ドレッド 「大した金額じゃねえが、あんたらになびくわけには行かねえな」
ファデリー 「人質を取られてるのか?」
ドレッド 「それを喋るわけにもいかねえ」
ファデリー 「北の大国を攻める予定がある。そちらに参加する気はないか? なんならおまえの体があくのを待ってもいい」
ドレッド 「ヴァラー騎士団と言えば、かつての名門。そいつが俺を買ってくれるたあ、ありがてえ話だが、遠慮させてもらうぜ」

9. 同、ポイントCのアニエス側
アバラボーンズA(カッパ)「敵の増援です! 大型の火器4門を備えた精巧な機工鎧で武装した巨大なる騎士!」
✕ ✕ ✕
(フラッシュ)
カッパが振り向いて目がキラーン
✕ ✕ ✕
巨大なカッパが変顔して安来節を踊っている。
アニエス 「カッパの安来節に見える……」
アバラボーンズA(カッパ)「またもや増援です! 奥院の秘密兵器、八本の腕と3つの顔を持つ怪人、それぞれの手に違う武器を持っています!」
アニエス 「なんだと?」
アバラボーンズB(カッパ)「西からは、インコの頭に象の鼻、口に地獄の邪気をくわえた異形の神が現れました!」
アニエス 「あ、それ見たい」
アバラボーンズC(カッパ)「じゃあ、尻がアフロでアコヤ貝に頭挟まれた校長先生!」
アニエス 「今、『じゃあ』って言ったよね? 『じゃあ』って?」
✕ ✕ ✕
(フラッシュ)
カッパが振り向いて目がキラーン
✕ ✕ ✕
変顔して安来節を踊るカッパが4匹に増えている。
アニエス 「これどれが何なの? 校長先生もまじってんの?」

10. 同、ポイントCのベルカミーナ側
壇上から戦っているカッパたちを見ているベルカミーナと参謀役。
ベルカミーナ 「戦況がわからん!」
ハイブリス(カッパ)「恐るべし! カッパの呪い!」
ベルカミーナ、参謀役のカッパを壇上から蹴落とす。
ベルカミーナ 「もういい! 私がケリをつける!」
ベルカミーナ、詠唱を始める。
ベルカミーナ 「蒼き海の底に眠りし古き支配者、星の光を喰らう意思なき恐怖の探求者、ニャルラ・クトゥル・モズルよ! 今ここに目覚め、この地に創世の混沌をもたらすがよい!」
ベルカミーナが立っているところがもりもりと盛り上がっていく。
ベルカミーナ 「さあ! 恐れるが良い! とくとその眼に焼き付けるが良い!」
✕ ✕ ✕
(フラッシュ)
カッパが振り向いて目がキラーン
✕ ✕ ✕

11. 同、ポイントCのアニエス側
巨大なカッパのシャワーシーンが現れる。
アバラボーンズA(カッパ)「カッパのサービスショット来たーっ!」
アニエス 「本当はなんなの、これ! ねえ、本当はなんなの?」

12. 同、沢
一面にカッパの死体が転がっている。
傷だらけになったハルクロがよたよたと歩いてきて、よろめいて膝をつく。
仮面をとって、血を吐くハルクロ、累々と並ぶカッパの死体に目が行く。
ハルクロの背中なめ、おびただしい数のカッパの死体。スーパーインポーズ。
T:『戦況がわからない』
ハルクロの背中なめ、クロスカウンターを打ち合って壮絶に死んだようなカッパ2匹。スーパーインポーズ。
T:『素直に悲しめない』
ハルクロの背中なめ、弱々しい眼をしたカッパ。ハルクロ、きゅうりをかざして見せて、左右に動かす。カッパはヨダレを垂らしてきゅうりを目で追い、奪おうとするがその手は空を切る。スーパーインポーズ。
T:『心までカッパ』
カッパ、息絶える。
立ち上がり、累々と並ぶカッパの死体を眺めるハルクロの背中。
ハルクロ 「いったいなぜ……、なぜこんなことに……、誰か……、誰か生きているものはおらんのかーっ!」
結構な数のカッパが手を上げる。
T:『やさしい世界』
  ✕   ✕   ✕
カッパの死体の群れの中から、エレインが起き上がる。エレインはハルクロを見留める。
エレイン 「ハルクロ?」
ハルクロ 「(エレインに気が付き)エレイン……。(指差し)向こうに空間の裂け目がある。妙なクマのきぐるみが広げている」
エレイン 「わかった」
ハルクロは崩れるように座り込み、そのまま横になる。
ハルクロ 「俺は……ここで少し……横になる……」
エレイン、はっとする。
エレイン 「ハルクロ!」
エレイン、ハルクロに駆け寄ろうとするが、足を止める。
エレイン 「(悲しみをこらえ)さらばだ、相棒」

(ABパート分けるとしたらここまで)

13. 同、空間の裂け目
グリアス(闇の申し子)が裂け目を広げようとしている。その周囲には5人ほどのハイブリスが警備している。
ハイブリスA 「静かになったな」
ハイブリスB 「奥院のなんとかって人が、異界の魔女を追っ払ったのかな?」
裂け目の方から、どごーんと衝撃波。
ハイブリス、衝撃をこらえて裂け目を見ると、裂け目は怪しい感じで広がって、うねうね動いている。
ハイブリスA 「なんだこれは」
裂け目の奥から、うごめく影のような怪物の姿が見える。長い触手を伸ばし、ハイブリスCをつかみ、引きずり込む。
ハイブリスC 「た、たすけてぇーっ」
グリアス、その様子に恐れをなす。
エレイン現れ、裂け目の異変を目にする。
エレイン 「何これ?」
エレイン、裂け目から黒い影が足を出し、這い出そうとしているのを見る。
エレイン 「させるかっ!」
エレイン、裂け目の前まで来てフレア・シェルをかざす。
フレア・シェルに裂け目から力が流れ込む。激震が襲う。裂け目は衰退せず、どんどん不安定になっていく。
エレイン 「どうしたんだっ! 裂け目が落ち着かない!」
背後からエレインに忍び寄るベルカミーナ。
ベルカミーナ、エレインの背後に付き、裂け目の方に押し込もうとする。
エレイン 「お前は!」
ベルカミーナ 「裂け目を消すつもり? そうはさせないわ。消えるのはあなたよ! あなたがこの世界から消えるのよ!」

14. 同、空間の裂け目が見える場所
前シーンのエレインとベルカミーナの様子を、少し離れた場所から目にするデーニュとコーニュ。
デーニュ 「やめろっ!」
デーニュとコーニュ、飛び出そうとするところ、目の前にグリアスが立ちふさがる。
グリアス 「ぐまぁぁぁぁぁぁっ!」
デーニュとコーニュ、グリアスに両手でラリアットを食らい、倒される。
コーニュ 「なんだこいつは……?」
デーニュ 「(口の中の血を吐いて)叩きのめしてやる」
デーニュ、起き上がり、ハンマーを取り出し、右手でくるくるっと回して構える。
コーニュ 「ハンマーか。ヴァラー騎士団らしくねえ」
コーニュ、弓を取り出す。
デーニュ 「お前もな」
デーニュ、ハンマーの回転を利用して近づいて、グリアスの足を打つ。グリアスが膝をついたところで、グリアスの顔を左右から殴打。5発目を手で受けられ、ハンマーごと放り投げられる。
コーニュ 「(弓を構えながら)なにもんだ、あいつ?」
グリアス、倒れたデーニュにせまる。
グリアスの背中に矢が3本連続して刺さる。
振り返るグリアス、コーニュの姿を見留める。
デーニュ 「コーニュ! 俺はいい! エレインさんを!」
コーニュ、エレインを見る。エレインはベルカミーナにぐいぐい押されてる。
コーニュ、弓を引き絞りベルカミーナを撃つ。エレインの肩に矢が刺さる。
コーニュ、はっとする。
エレイン 「あのバカ……」
コーニュ、目を凝らすと、ベルカミーナの近くがプリズムのようになっているのがわかる。
コーニュ 「しまった、プリズミック・ウォールか……」

15. フローレンス城 アシュリンの部屋
アシュリンの熱がひどくなり、呻いている。祈ってるアバラボーンズA(ジョルジョ)。
アバラボーンズA 「お前も祈れ! サルバドール!」
アバラボーンズB 「祈るって、何に?」
アバラボーンズA 「何って……、天界に住んでるエロールにだよ!」

16. ヴァポラムの空間の裂け目が見える場所
デーニュ、グリアスより左右からビンタ食らいながら、追い詰められる。
デーニュ、倒れる。
グリアスの背に3本の矢が刺さる。
グリアス、背後のコーニュを確認。
グリアスは倒れたデーニュをつかんで、コーニュのほうにぶん投げる。
クシャクシャになって倒れるデーニュ、コーニュ。
デーニュ、コーニュに駆け寄るグリアス。
アニエス、スライディングしてきてグリアスの足をナイフで切る。
グリアス、バランスを崩し倒れる。
アニエス、してやったりの表情。
が、アニエス、グリアスが自分の足を掴んでいることに気がつく。
アニエス 「やばっ!」
顔をあげ、ニヤリとするグリアス。
コーニュ 「逃げ……ろ……」
デーニュ 「アニエス……」
グリアス、立ち上がり両手でアニエスの足を掴んで引き裂こうとする。

17. ヴァポラムの空間の裂け目
ベルカミーナとエレインが裂け目の前でもみ合っている。
エレイン、ベルカミーナから体の半分くらい裂け目の中に押し込まれている。
ベルカミーナ 「怖いの? この向こうは、ピンクのカバが住むところ、異界ルナリア、あなたのふるさとでしょう?」
エレイン 「(苦しみながら)違う……お前たちは……違う扉を開いた……」
ベルカミーナ 「違う扉?」
ベルカミーナ、空間の裂け目の穴を覗き込む。中は深淵の闇に様々な怨霊が渦巻いている。
エレイン、ベルカミーナの肩越しに何かを見留める。
エレイン 「さすがは鬼神だな……。生きていやがったか」
ベルカミーナ、その声を聞いて、振り返る。
凄まじいオーラを噴き上げたハルクロの姿がある。
ハルクロは片手でグリアスの首を掴んで掲げている。
ハルクロ、グリアスを投げ捨てる。
ベルカミーナ(M) 「あの子が、やられた?」
ハルクロ 「二人とも、そこを離れろ、この森はもうダメだ。タッカー城と同じ惨劇が起きる」
ベルカミーナ、裂け目とハルクロを交互にながめる。
ベルカミーナ 「まさか……」
ベルカミーナ、よたよたとその場から逃げ出す。
エレイン、ハルクロに手を挙げてみせて、裂け目にフレア・シェルをかざす。
ハルクロ 「いかん! もうよすんだ!」
裂け目は安定を失い、衝撃波を放ち、エレイン以外全員吹き飛ばされる。
エレインはフレア・シェルから発生したオーラに包まれている。
エレイン 「もともと私が、こっちとルナリアを行ったり来たりしたせいで出来た穴だ」
エレイン、フレア・シェルに意識を集中させる。フレア・シェルは輝きを増す。フレア・シェルの中から、女の子の笑い声が聞こえてくる。
SE:女の子の笑い声
エレイン(M) 「笑い声……? そうか……この石、人間だったのか……」
ハルクロ 「やめろ、エレイン! その石に波長を合わせてはいかん!」
エレイン 「(フレア・シェルに)誰かしらんが……、力を貸してくれ、頼む」
フレア・シェルがエレインの胸の前に浮き上がる。
フレア・シェルからエレインに光が注がれる。
エレインの尾てい骨のチャクラから、エネルギーの渦が生まれる。
エレイン 「これは?」
フレア・シェル 「尾てい骨に宿る、あなたのエネルギー」
エレイン 「すごい……こんな力が……」
フレア・シェル 「時空の狭間から流れ出る力を、あなた自身の命で、巻き取って、結晶化させる……」
エレイン 「そんなことが……」
フレア・シェル 「いい?」
エレイン 「ああ、やってくれ」
フレア・シェルと、エレインのチャクラの渦が同期して回り出す。
エレインの周囲にエネルギーの渦が生まれる。
渦が裂け目の力をどんどん巻き取る。
裂け目の中にいた蠢く影も引き出されて、渦の中に消える。
少し離れたところにアニエス、デーニュ、コーニュの姿も見える。
アニエス 「な、何が起きてるの?」
裂け目が少しずつ狭まってくる。
エレインは足元から石に変わっていく。
ハルクロ、宙に浮かんだフレア・シェルを見留める。
ハルクロ 「その石を叩き落とせ! エレイン! お前自身が石に引きずり込まれる!」
エレイン 「(ハルクロを見て、微笑む)うっせえおっさんだ」
ハルクロ、裂け目からの圧力に逆らい、エレインのほうへ歩く。舞っている瓦礫がぶつかり鬼神のマスクが飛ぶ。
ハルクロ 「エレイン! お前が犠牲になる問題じゃない! やめるんだ!」
ハルクロ、必死の形相ですがる。エレインの体はどんどん石になっていく。
エレイン 「来るんじゃねえ、ハルクロ! てめえの相棒の門出だ! 笑顔で見送れ!」
ハルクロ、圧に押されよろめき、剣を地面に突き立て、エレインにせまる。
ハルクロ 「行くなエレイン! 東に俺が生まれた村がある! 俺は、敷居をまたぐことはできんが、お前とサラなら、そこに住まわせてやれる! 行くな!」
ハルクロ、言いながらエレインににじり寄り、フレア・シェルに手を伸ばす。
エレイン 「その手を引け、ハルクロ。この石は……、この石は私の命だ。これを取るのは、私を殺すのといっしょだ」
ハルクロ、フレア・シェルを取ろうとする手をこらえる。
アニエス 「(渦をこらえながら)ハルクロ殿……」
エレイン 「アシュリンを、ファデリーを守ってやれ。ヘッポコ二人ももっと鍛えろ。それがお前の、使命だ」
フレア・シェルに伸ばしたハルクロの手が震える。
ハルクロ 「妻に続いて、お前まで……、俺は……、俺はっ!」
エレイン 「乗り越えるさ、お前なら。あばよ」
エレインを包む結晶が急速に成長していく。
アニエス 「いやーっ! 誰かなんとかしてーっ!」
結晶が成長しきるとともに大きな衝撃波。全員吹き飛ばされる。

18. フローレンス城 アシュリンの部屋
ぱっと眼を見開くアシュリン。
アバラボーンズA 「おっ?」
アバラボーンズB 「祈りが通じた?」
アシュリン 「(宙空を見つめたまま)大丈夫、あの人を、光の宮殿へ送ります」
アバラボーンズA 「へ?」
アシュリン 「(アバラボーンズの方を見て)二人のうち、どちらか……いつか迎えに行ってあげてください……」
アバラボーンズB 「へ?」
そのまますーっと気を失うアシュリン。
アバラボーンズB 「アシュリン姫!」
アバラボーンズA 「姫!」

19. ヴァポラムの空間の裂け目
エレインは完全に石になってる。
フレア・シェルはその石の近くに浮いている。
そこにあった空間の裂け目は見当たらず、光の粒が舞っている。
石になったエレインが光の粒をすべて吸い取ると、フレア・シェルは転がり落ちる。
ハルクロ 「うおおおおおおおおおおっ!」
絶叫するハルクロを眺めるアニエス。
アニエス 「ハルクロ殿……」
ハルクロ 「うおおおおおおおおおおっ!」
近くの大木に頭を打ち付けるハルクロ。
ハルクロ 「うおおおおおおおおおおっ!」
デーニュとコーニュ、ハルクロに後ろからしがみついて押しとどめる。
エレインが結晶化した石に、光が差し込み、光の天使が舞い降りる。天使は石の中から、気を失ったエレインの手を取って空へと連れて行く。それをぼんやりと見ているアニエス。
アニエス(M) 「エレイン……?」
天に召されていくエレイン。
光満ちた空を見上げるアニエス。
アニエス(M) 「さようなら、エレイン……」
マリウス(N) 「この戦いの末、暗黒騎士団アバラボーンズは更に評判を落とし、このあと2年に渡り表舞台から姿を消すことになる。アシュリン姫の熱は、世界の危機が消え去るとともに下がったが、彼女自身はこの戦いの前後に起きたことをあまり覚えてはいなかった。なおこの戦いで、両軍ともに一人の死者も出なかったのは、カッパの呪いのせいだとも、エロールの女王のはからいだとも言われているが、詳しいことはわかっていない。そして、ルナリアに一人残されたサラがこの事件のいきさつを知るのは2年以上先、この戦いに参戦した者達の状況も様々に変わったあとの話となる」

20. ルナリア(異界)のエレインの家
テーブルにチーズが置いてある。チーズにはろうそくが15本立てられてる。サラが椅子に座って、まわりには白ヤギ黒ヤギ、イケメンヤギ2頭、子ヤギ8頭がいる。
サラ 「お母さん、私、15歳になったよ」
拍手するヤギたち。
サラ 「フレア・シェルがあったら、お母さんを探しに行けるのに……」
サラ、ポロポロと泣き出す。
悲しくなるヤギたち。

21. 村の酒場兼宿屋
酒場で話してる客(カッパ)、その話を聞いてるクレアとおじいちゃん。
客1(カッパ) 「それで、その異界の魔女ってのが、鬼神に託したものがあるらしいんだ」
客2(カッパ) 「鬼神に託したもの? なんだいそりゃ?」
客1(カッパ) 「空間の歪を広げる恐ろしい石さ。なんでも異界から魔女の娘を呼びだして、もうひと暴れする気でいるんだと!」
客2(カッパ) 「はあー、さすがは魔女、執念が違うなあ」
客1(カッパ) 「ああ、だけどその鬼神ってヤツも、凄腕の賞金稼ぎに囚えられたらしい。まあ、一安心ってとこだな!」
クレア 「(テーブルに小鉢と酒を起き)モロキュウと黄桜、置いときますね」
客1+2(カッパ)「おう! ありがとう!」
おじいちゃんはその話を黙って聞いてる。

22. ルナリア(異界)のエレインの家
前の同じ場所のカットの続き。
15歳の誕生日のケーキに見立てたチーズを前にポロポロ泣いてるサラ。
激しい振動とともに、窓の外が激しく光る。
サラ、立ち上がり窓をあける。外にはおじいちゃんが倒れていて、その手にはフレア・シェルが握られている。
サラ 「おじいちゃん……?」

マリウス(N) 「事件から2年後、サラはおじいちゃんからフレア・シェルを受け取った。おじいちゃんはそのシェルの由来を語ることはなく、サラもそれを訊ねることはなかった。それから間もなくして、サラはヤギたちを山に帰して、フレア・シェルを用いてソラスを訪れた。ドレッドやマリウス、ハルクロたちと出会い、消えてしまった母の行方を探し、ヴァポラム、フリオリ、クルーゼンブルク城と、母の足跡を辿ったが、その姿を見つけることはできなかった」

23. エロールの世界 光の宮殿
光にあふれた世界で眼をさますエレイン。眩しくてまわりがよく見えない。
エレイン 「ここは……(飛び起きて)天国?」
まわりから笑い声が聞こえる。
エロール(声) 「ここはダルシーネイア。エロールの住む世界」
エレイン 「(光に目を細めつつ)エロール……? てことは……やっぱ天国かー。ガラじゃねえのにな、そういうの」
エレインの目が光に慣れてくる。
まわりには白く透き通った天使のようなカッパが舞っている。
エレイン 「カッパ天国ってか!」

24. エロールの世界 光の宮殿
前のシーンと同じ場所。
エレインの前に光の船が舞い降りる。光の船から男が降りてくる。男は すぐにエレインに気がつく。
男(ジョルジョ)(30)「おりょ? エレイン殿? いったいなぜここに?」
エレイン 「なぜここに……って? あんたは誰なんだよ」
男 「あ、そうか、ずっとヘルメットかぶってたからなあ。アバラボーンズっすよ。名前は……、まあ、名前はいいか。お嬢にも雑魚1って呼ばれたりしてたし」
エレイン 「お嬢?」
男 「ああ、アニエス嬢のことでやんす。あれからいろいろあったんすよ、エレイン殿が石になってから」
エレイン 「あれから? いろいろ?」
  ✕   ✕   ✕
時間経過。
エレイン 「2年半も経ってるの? こっち1週間しか経ってないのに!」
男 「ああ、時間の流れの速さが違うんすかねえ。ああ、そうそう、サラって子にも会いやしたよ」
エレインの表情がほころぶ。
エレイン 「サラに……?」
男 「めちゃくちゃたくましくなってますよ。あの頃のエレイン殿を超えてんじゃないですかね?」
エレイン 「(涙ぐんで)サラ……。良かった……」

25. エロールの世界 光の宮殿
前のシーンと同じ場所。
座り込んでカード遊びに興じる二人。
エレイン 「ウノ!」
場に積み上がったカードの上に、カードがたたきつけられる。
エレイン 「はいまたあたしの勝ちー!」
後ろに倒れこむエレイン、前にがっくりうなだれる男。
男 「ふああ、こっちの世界はたいくつでやんすねえ」
エレイン 「しょうがねえよ、死んじまったんだから」
男 「ハァ……(ため息)、そろそろ帰ろうかな……」
エレイン、ガバッと起き上がる。
エレイン 「帰れるの?」

26. おじいちゃんの村、新しい家の前
サラ(16歳)が目隠しされて、おじいちゃんに手を引かれてくる。おじいちゃんの隣にはカッパ。
サラ 「私ね、こっちに来る前は、村の人がカッパに見えてたんだ。こっちに来てからも、マリウスも、鬼神も、アシュリン姫も、みんな敵だと思ってた」
目の前にはサラがルナリアで暮らしていた時と同じ家が立ってる。
おじいちゃん 「もういいよー」
サラは目隠しを取り、目の前の家を見て驚く。
サラ 「この家は!」
おじいちゃん 「ルナリアにあった家と同じのを作ったんだよー。ほっほっほ」
サラ、走って家の中に入る。

27. おじいちゃんの村、新しい家の中
家の中、サラ、納戸を開ける、柱を触る、自分のベッドに飛び込む。
サラ 「おんなじだーっ!」
おじいちゃん 「わし、物覚えいいから」
サラ 「おじいちゃんの記憶から再現したの?」
ぞろぞろと部屋に入ってくるヤギたち。成長し、数も増えてる。
サラ 「(気づいて)はあーっ!(感動)あなたたちも来たんだ!」
サラ、壁を見て、何かに気がつく。
  ✕   ✕   ✕
(回想)
エレイン宅の同場所。
壁の絵を指差すサラ。
サラ 「この女の人は誰?」
エレイン 「お姫様。この城の」
サラ 「お姫様!」
  ✕   ✕   ✕
回想終わり。
サラ 「 (壁を示しながら)本当はここに、絵があったんだ。お母さんと、あと一人、私が知らない人が座ってる絵」
サラの脳裏に、母親と暮らした日のことがフラッシュバックする。
(フラッシュ)
絵に描かれた自分を指差すエレイン。
(フラッシュ)
おじいちゃんが来た日。
(フラッシュ)
ヤギのお腹をさすった日。
(フラッシュ)
エレインにボコボコにやられて泣いた日。
(フラッシュ)
雨漏りの水をバケツに受けた日。
(フラッシュ)
サンドイッチを食べた日。
サラ、ポロポロと涙をこぼす。
窓の外に激しい光が降りてくる。
部屋全体が真っ白く照らされる。
サラ、手を上げて目を覆う。
サラ 「何?」

28. 同、家の外
玄関から出てくるサラ。
家の前には光の船がある。
光の船から降りてくるエレイン。
エレインはまわりを見渡し、自分の手を見て、大きく息を吸い、サラの姿を見つける。
サラ、エレインの姿を見て驚き、混乱し、ぽろぽろと泣き出す。
サラ 「どうして?」
サラ、エレインに歩み寄りしがみつく。
エレイン、サラを抱きしめる。
家のまわりにはピンクのカバがいる。
サラはエレインの手をとって、部屋の中に連れて行く。
マリウス(N) 「こうして、新しい家で、新しい物語が幕をあけました」

29. 同、家の中
部屋の中、納戸を指差すサラ、後ろで微笑むエレイン。
マリウス(N) 「新しい物語は、こう始まります。『昔々、あるところに、魔法使いエレインと、その相棒、サラが住んでいました』」
後ろにいるエレインに振り向くサラ。
サラ 「相棒?」
サラの視線の先にエレインがいる。
二人の間には窓が見え、カメラは二人の間を超えて窓へ、窓が開き、カーテンがはためき、カメラは外へ出る。
そこには無数のピンクのカバがいる。
ピンクのカバだらけの世界をカメラが飛び回る。

T:タイトル 『セブンス・リバース ピンクのカバが住むところ』

M:エンディングテーマ曲

(終わり)

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