ゴマメのスマタ・第2回・ゲームシナリオの特殊性の話

 朝、目覚ましの音が響いている。
 主人公は布団をかぶって寝ている。
 母親が主人公を呼ぶ声。
 
 ……みたいなシナリオを書いたら、まあだいたいどこのシナリオ教室に通っても、やっぱりそう来ましたか(ニヤリ)みたいな感じで『悪い例』として晒されてしまうと思うんですが、なんと、ゲームではこの手のシナリオが求められることがよくあります。
 ゲームの冒頭で求められるのは、こういったカビ臭いオーソドックスな導入なのです。

 と、少々煽るような感じで入ってみましたが、みなさんお元気ですか。
 第2回、ここからがゲームシナリオ随筆の『基本編』です。
 随筆のくせに基本編たぁ、ずいぶん偉そうじゃねぇかって、ああ、いや、ごめんなさい、偉ぶってるわけじゃないんですよ、本当にあの、ごめんなさい。

 ゲームのシナリオってのは特殊なので、こうやって文字化しておかないと、
「ゲームのシナリオなんてクソだ。俺が変えてやる」
 という先生が現れたときにね、たいへん苦労すると思うんですよ、お互いに。
 だからまあ、最初に、
「ゲームはクソですから」
 と、断ってるわけなんですけど、まあ冗談ではなく、ほんとにゲームの冒頭はカビ臭いです。

 ありがちなのは……
 たとえば、暴漢に襲われる町娘を助ける旅人
 たとえば、漆黒の宇宙をバックに語られる神話の物語
 たとえば、戦いで負けて悔し涙を流す主人公
 たとえば、夢にうなされて飛び起きる主人公
 たとえば、校門前の登校シーンから、校庭、教室と来て、教室のスピーカーをバックに始業のチャイムが鳴って、先生が入って来るカットではカメラは引き戸の上の方をとらえ、先生の声、カメラは先生の足元を映し、先生の後ろにもうひとり、主人公がその姿を見留めると同時に起立の号令、あわてて立ち上がる主人公

 などなど。
 いや、ねぇな。見たことねぇ。というか、最後のやつ、遊びてぇ。
 あ、ごめんなさい、なんかすごい適当なこと書きました。
 いやでも、逆に言うとそこですよ。
 ゲームって、「あーそれ見たことある、それゲームになるんだったら遊びてぇ」ってのが動機になるケースがあるので、ダメな入り方が全部ダメとはならないんですよ。
 なのでゲームの冒頭として参考にするのは最近のアニメや映画ではなく、70年代あたりのマンガやドラマのほうがこれだ! というのが見つかる可能性が高いと思います。
 これは半ば皮肉でもあり、半ば本気でもあり、で、だからこそやっかいなんです。

 ゲームのシナリオがアニメと違う最大のポイントは

  1. 冒頭がド定番だったほうがウケがいい
  2. ゲームのシステムに縛られる
  3. エピソードを挿入できる場所が限られる

 の3つくらいかな? と思います。
 細かいところ、あるいは書式などについてはいろいろありますが、それはさておき。

 で、その1。

 まずは冒頭に関して

 なんですけど、ぶっちゃけますと、ふだん映画やアニメ見て冒頭でこりゃダメだーって思うことはしょっちゅうあるんですよ。うわーひでぇもんだなこりゃー、なんてことをついつい思ってしまうのは、まあ、みなさんあると思います。
 だけど、自分ではそれを書いてしまうんですねぇ。
 はっはっは。
 いや、笑い事じゃなく。
 まあそうなってしまうのは、端的に言うと無能だからで、どんな事情や制約があろうとも一流のライターは一流の作品を上げるもんなんでしょうけど、自分で書くとなぜか、いつの間にか、知らないうちに、気がつくといつもそこに、途方も無い凡作を書き上げて満足していることが度々あります。
 書き上げただけでなく、満足までしちゃうところがもう、いかにも三流。

 実際のアニメや映画だと冒頭の1カットはとても重要で、そのたった3秒から5秒のカットで作品全体を象徴したものを見せる、と言ったような高いセンスを披露する人もいますが、ゲームの場合残念ながら、それが求められません。

 アニメだとたとえば……

 1カット目で大空を鳥が飛んでいたとします。
 作品には、果てしない夢を追いかけている主人公が登場します。
 その主人公が能力を手に入れた時、彼人は鳥とともに大空に舞い上がる……

 なんて風に描かれていたらグッと来るじゃないですか。
 こんな風に鳥を使った表現、ラブライブ! だったり、映画実写版の進撃の巨人だったり、あとたしかヒーローアカデミアにも見られたと記憶しています。
 でもゲームだと、そういう描き方は基本的にはしないんです。

「鳥のアセット、削ってもいいですか?」
「了解でーす」

 みたいなやり取りを何度したことか。
 いや、見てる数が少ないので、もしかしたらそういうのも主流になりつつある、という感じだったらごめんなさい。あくまでも主観です。

 他方、ゲームの冒頭はあくまでもゲームのシステムにはいってもらうための添え物で、だからこそ見覚えのあるものが選ばれがちです。
 で、困るのは、それだとしょせんはパロディでしかなくなってしまうというところなのです。
 これは僕の性格もわざわいしているんですけど、やっぱり目覚ましが鳴ってる場面から物語が始まるとなるとパロディとしてしか書けないんですよ。気持ち的には。
 でもそれを真剣に、本当にこれが書きたい表現で、これがベストな冒頭なんだってことを自分に納得させないと、その後ろにちゃんとした物語が乗っからない。
 その最初の段階で踏み外したままパロディを続けてしまう……ってのもよくある話。

 もちろん、そうならないように見覚えのある冒頭でも、なんかしらフックになるようなものを打ち込んで、そのフックからエピソードラインに乗っけて、みたいなことはやんないとお話にならないのでやってはいるんですが、これはまたのちほど、テンプレートライティングに関して書くときに触れると思います。

 で、その2。

 ゲームのシステムに物語が縛られる点

 一番わかりやすい例としては『牢屋に投獄されるけど、システム上はいつでも自宅にワープできる』などですが、ここをどう言い逃れるかはディレクター氏らと詰めながら探る以外に解決法はないと思います。
 オンラインゲームやオープンワールド系のゲームだとなんだかんだ理由をつけて牢獄から抜けられるようにしておいて、そのクエストの続きをプレイしたかったら自ら牢獄に戻って続きを遊ぶ、みたいな形になることが多いと思います。
 あるいはひとりプレイのゲームだと、容赦なく投獄されるケースが多いですね。
 このあたりの処理はいくつか定番があるので、システム担当の人やディレクターさんなどが適切にアドバイスしてくれま。

 他の例としてありがちなのは、『クエストの前後で人間関係が変化してはいけない』ですね。
 普通のお話だと、エピソードのあと主人公と親友の間が険悪になってるなんてのはよくあることでしょうが、ゲームだと他のクエストが挿入される可能性があったりして、関係を変えちゃいけないってルール付けられてることがよくあります。
 まあその程度は簡単だ、って思うじゃないですか。でも、かなり注意を払ってるつもりでもうっかり超えちゃいますからね。いまだにやらかしてます。

 同様の例で、主にオープンワールド系のゲームに多いんですが、『NPCの居場所を変えてはいけない』というのも案外やっかいです。
「山の方に案内してやろう」
 とか言って山の方に移動しながら、別の場所に行って戻ってみると、さっきのキャラがまだそこにいた! ……みたいなものに遭遇したことある人は多いと思います。

 この場合、
「すぐに追いかけていくので先に行ってくれ」
 と言ってプレイヤーを先に行かせて、山へ行くとそのキャラクターが追いかけてくる、というのが定番になってますけど、3つくらい同じクエストを書いたあたりで己の存在価値について考え始めてしまいますね。
 こういうのは舞台演出で言うところの黒子、見えてるけど見えてない扱いとして、ユーザーは目を瞑ってくれるもの、という想定で大丈夫だとは思うんですけど、果たしてそこに甘んじて良いものか。

 他に細かいところを挙げていくと
『重要アイテムを捨てても、同じものをもらえる』
『はじめて見たアイテムの使い方を知ってる』
 なんかもそうだと思います。

勇者「この剣で本当に封印が解けるのか……?」
僧侶「ええ、やってみてください」
勇者「ふんっ!」

 というようなシチュエーションで、つい

僧侶「よくやり方がわかりましたね」
戦士「今、剣が光ったんだけど、どうやったんですか?」
魔法使い「さっきのポーズってオリジナルですか?」

 と、続けたくなっちゃうんですよね。
 というか、まずはそれで提案して修正を食らう、というのがいつもの僕のスタイルです。

 で、その3。

 エピソードを起こせる場所が限られてる点

 これねー。
 苦労するよねー。
 ドラゴンクエストやファイナルファンタジーなどの贅沢なアセットを持つゲームだったら、たいがいどこにでもエピソードを挿入できると思いますが、ゲームによってはショップ内や宿屋ではエピソードを挿入できない、ワールドマップではプレイヤーキャラのみしかカットシーンに登場させられない、みたいな制限がかかることがあります。

 あるいは、ダンジョンの入口と出口でしかストーリーを語れない、というゲームもあって、この場合『なぜこのダンジョンに来たのか』をそのダンジョンの入口で説明しなければならなくなります。
 前のダンジョンのラストで
「お爺ちゃんが◯◯の洞窟に連れて行かれた!」
 みたいなセリフでも言ってればダンジョンに来た理由くらいわかるんですけど、マップが分岐するようなケースではそれすらも言えない。

 で、この、『ダンジョンの入口と出口でしかストーリーを語れないゲーム』、昨今のスマホRPGではけっこう見かけますよね。しかもそんなゲームに限って、この手のクエストが無数にある。
「ダンジョンの入口と出口、2箇所書くだけでだったら楽勝じゃ~ん」
 みたいな感じでお気楽に臨むんですが、この入口と出口だけで語るエピソードが100個続いたらもう、地獄。

 ひたすら同じパターンが続いているんだけど、果たして面白いんだろうか
 同じ黒幕が何度も現れて同じ強がりを言って去っていったけど、成立してるんだろうか
 ……ってのがどんどんわからなくなっていくという。

 この、入口出口パターンのシナリオをちゃんと書くにはコツがありまして、まずしっかりと全体の物語を構成して、その膨大な背景の中から効果的なエピソードを選ぶ、という、シナリオの書き方としては基本中の基本、しごくまっとうな作業と能力が求められるのですが、なまじ簡単に書けてしまえるために、

「よくぞここまで来たな! 貴様らにコイツを倒せるかな!」

 で、モンスターをけしかけ

「あの化け物を倒すとは…… 覚えてろよ!」

 で、去っていく、という単純なパターンを延々続けてしまってごめんなさい。
 そういうの書いたの僕でした。
 途中でなんか、このパターン3つ前のダンジョンでも書いたなぁ、でもちょっとシチュエーション違うし大丈夫だよねー モンスターの登場演出も違うしー……って、本当にごめんなさい。
 もう、入口出口で100個続くとか、単純に無理だから。

 と、そんな風にゲームのシナリオは特殊で、書き慣れていないとどう書いてよいやらわからない、うっかり書き慣れてしまうと楽な書き方でパターン化してしまう、ということになってしまうんですが、ここでみなさんに覚えておいてほしいのはですね……

 書き手が三流なんじゃなくて、三流風な書き方を望まれてる?
 みたいな?

 あ、いや、ごめんなさい。
 僕が悪いんです。
 精進します。

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