ゴマメのスマタ・第1回・ごあいさつ

 まさかね、自分がシナリオを書く人になるなんて思ってもみなかったんですよ。

 小学校の頃から国語が苦手で、高校の頃
「アニメーターになろう!」
 と思い立ったときも、ゆくゆくは演出なんかのほうに進みたいと思いつつも、シナリオに進むなんて1ミリも考えてなくって、ゲームの仕事についてからも絵なんかはちょろちょろ描いてたんですけど、まさかシナリオを書くなんて、とてもじゃないけど恐れ多いと思ったものでした。

 ええっと、そんなわけで本日よりゲームシナリオ随筆・『ゴマメのスマタ』が始まります。なんなんだそのふざけたコーナータイトルは、と思うかもしれませんが、まあ、聞いてください。
 

 
 僕のまわりには天才が溢れていたのです。

 と言いますのも何の因縁か、アニメーターになろうと上京した頃に小山高生というアジア最大のシナリオライターに出会いまして、その周辺にいる若手の話を聞いたりしていたのです。何度か僕のアパートの部屋にも来て、夜遅くまで語らったりしたものでした。まだ娘さんは幼稚園の年長さん、今はシナリオライターとして活躍されている息子さんは2歳か3歳じゃないかなってときに、ほんと、うちなんかに引き止めてすみませんでした。

 その後、先生がシナリオ教室を開いてからは、僕はその講義の内容を人づてに聞いたりしながら、巣立っていく天才たちの背中を遠くからぼんやりと見てきたのです。
 そんなわけだからまさかそんな、僕がシナリオなんて、先生の講義すら受けていないのに、書けるわけがないじゃないですか。

 そう思って、スクウェアに入社した後も、シナリオ的なお仕事はのらりくらりと避けてきて、書きたい人に書いてもらって、僕はスクリプトで実装しましょう、みたいな立場を取っては来たんですが、プロジェクトによってはそうもいかなくなって来まして、いつしかシナリオも書くようになっていました。
 最初にちゃんとシナリオとして書いたのはライブ・ア・ライブの近未来編だったと思います。その作品には時田貴司師匠がうまい具合に演出をつけてくださったおかげでけっこうな出来に仕上がりまして、これなら行けるんじゃないかな? と、感じてしまったのがこの道へと進んでしまった直接のきっかけでした。

 実際には僕はスクリプターと言いまして、表示物に動きをつける――たとえば、魔法のエフェクトがぐるぐる回って飛んでいったりする動きをつける――のが本業で、こちらにはかなりの自信がありまして、その後もスクリプトやディレクションと兼業でシナリオを書いて来たんですけども、独立するに当たりまして、『スクリプターです!』と自己紹介したところで何をする人なのかよくわからないので、それまでの先生への不義理などには一切目を瞑って『シナリオライターです!』と、名乗らせていただくことにした次第です。
 そんなわけで、今でもシナリオライターを名乗ることに気後れがあるんですよ、実は。
 

 
 はい。ここまでは前置きですね。

 まあ、もう少し前置きなんですが、このコーナーは飽きない限り30回くらい連載、文字数は毎回2000文字から5000文字、トータル10万文字を目安としてお送りいたします。
 10万文字っていいですね。中編の小説で1本ぶん、ゲームのシナリオだとメインルートのみの最初から最後まで、くらいの物量感ですかね。ゲーム1本ぶんのテキストは全部数えると50万文字から100万文字になることがあるので、10万文字だと、いいのかなそんな文字数で、って気持ちにもならなくもない感じです。

 さて、以前より『ゲームのシナリオ講座』みたいなものを書いてみるのも良いかなと思っていたんですが、いくつかの理由から『随筆』というジャンルに逃げることにしました。その理由は、第一にはやはり師匠のシナリオ講座を受けていないというコンプレックスが大きいのですが、ゲームのシナリオの書き方が人によってもプロジェクトによっても異なるので講座の書きようがない、というのが最大の理由です。

 シナリオの書き方はメインライターで入るかサブで入るかでも違いますし、どんな書類、たとえばWORD書類なのか、EXCELなのか、はたまたグーグルスプレッドシートなのか、でも違いますし、予算や、リリース形態によっても変わってきます。先方に文芸担当のような人がいて情報を取りまとめてくれる場合もあれば、ゲームのシステムに近い部分まで提案することもあるという、配属されてみないと何もわからないという、踏み込んでビックリみたいなことばかりな世界です。
 リテイクに関しても、具体的な指示でくることもあれば、感覚的なふわっとしたものでくることもあり、プロットの段階でセリフの細々とした指示がくることもあれば、仕上げの段階でプロットからの直しがくることもあるという、そんな波に身を委ね、乗り切っていくのがお仕事で、コツ? なんてものが果たしてあるのやらないのやら、という日々を送っております。
 おおむね、最初の段階で担当者から細かい修正が来て、次の段階でディレクターから大きな直しが来て、最後にプロデューサーがやってきて根本部分を変えて行くんですが、これが逆の順で来てくれたらどんなに楽かと思いながらも、そういう制作にもカラダが慣れてしまうものなんですねぇ。不思議ですねぇ、カラダって。

 で、そんな中で『これがゲームのシナリオの書き方だ!』なんてことを言ってもしょうがないし、下手に覚えられても現場に適合できない人になってしまうだけなので、基本は温めの随筆ってことにしました。
 随筆ってなんか、ちょっとした気持ちを吐き出して預けておくコインロッカーみたいで、ここに書いておけば僕自身少しだけ身軽になれるのかな、って気がしますし。
 とは言え、随筆のフリをしながら核心も突いていくスタイルみたいなものを目指したいですね、本音を言えば。
 

 
 先生からはいろんな話を聞きました。某氏のライブにも連れて行かれ、講演会では最前列でサクラをやらされました。

 国分寺の木村荘201号室、先生の言葉でよく覚えているのは『ごまめの歯ぎしりにもなりゃしねぇよ』で、その前後はよく覚えていないんですがまあ、このセリフだけで当時の空気感が思い出されます。
 
 あの、山本正之先生が、

 
アニメがなんだ プロデューサーがなんだ
ワイロとオンナとゴマスリで 仕事をもらうなら
まあね まけたね お菓子はエライ
(山本正之作詞・アニメがなんだ)

 と歌った、お菓子によってアニメ界の方向性がガラガラと変わって行ったあの頃の空気感。
 
 そうだ、この随筆のタイトルは『ごまめの歯ぎしり』で行こう!
 
 と、思ったらなんか有名な政治家が同名のブログやってんじゃねぇか、あんな奴とかぶるのはまっぴらごめんだ、あとは師匠から教わった言葉……なんだっけ……なんか言ってたな……そうだ、『スマタ』! あと、『舐めダルマ』! いや、舐めダルマを言ったのは俺だ。しょうがねぇ、師匠のありがたい言葉のうち覚えてんのが『ごまめの歯ぎしり』と『スマタ』なんだから、ここはもう『ゴマメのスマタ』で行くしかねぇ。

 いやまあ、タイトルはなんでもええのです。
 プロとして仕事してると、たまに己の魂を100%開放してみてぇなぁと思うことはあるんですが、作品の方向性を無視して自分勝手にやっても、それこそゴマメのスマタにもなりゃしねぇわけで、いや、スマタだと言えばスマタっぽいな。そのへんはどうなんだおい。というのは一旦置いといて、その『己の魂』って奴をいったんこの随筆というコインロッカーに託して、身軽になって、また明日からの使命に挑んで行けたらいいな、と思った次第であります。

 ええ、そんなわけでありますが、ここで3000文字くらいですかね?
 ちゃんと最後まで読んでいただけているでしょうか?
 なんだって!?
 途中寝てた!?
 いや、寝てたって何事よ。
 逆によくここまでたどりつけたよな。
 凄いわ。

 と、そんなわけで、今回はこのへんで。
 ご拝読ありがとうございました。

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